イラン議会委、ホルムズ海峡の通行料設定を承認 トランプ氏はイランの発電所や淡水化施設など破壊すると脅す

がれきの山と化した破壊された建物の前、携帯電話を手にして話す女性。晴天の下、遠方には小高い丘が見える

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画像説明, テヘランの破壊された住宅地(30日)
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イラン議会の国家安全保障委員会は30日、原油輸送の要衝ホルムズ海峡に通行料を設定する法案を承認した。政府系通信社が伝えた。ドナルド・トランプ米大統領はこれに先立ち同日、イランが同海峡を開放しなければ、同国の油田や発電施設、淡水化プラントなどを攻撃すると改めて警告した。イランがアメリカとの交渉を否定し続ける一方で、米ホワイトハウスは交渉は順調だと主張。この間、イランとイスラエルの攻撃は続き、原油価格は高止まりしている。米紙は同日、トランプ氏はホルムズ海峡の封鎖が続く状態でもイランへの軍事行動を終える用意があると伝えた。

イスラム革命防衛隊(IRGC)系のファルス通信によると、ホルムズ海峡を通過する交通に通行料を課す計画を、イラン議会の国家安全保障委員会が承認した。

計画には、米・イスラエルの船舶の海峡通過を禁止する措置も含まれているという。対イラン制裁に参加した他国の船舶も、通行禁止になるとしている。

AFP通信によると、新しい通行料制度はイラン国営テレビで発表された。イランはオマーンと協力して制度を実施すると説明があったという。

通常は世界の原油の約20%が、イランとオマーンの間に位置するホルムズ海峡を通過する。欧州の調査会社「Kpler(ケプラー)」によると、開戦以降、通行量は約95%減少したという。

イラン議会委の決定に先立ちトランプ米大統領は、アメリカが「新しいイラン政権」と「真剣に協議」を進めており、これにより「イランでの軍事行動を終わらせる可能性がある」と表明していた。

トランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、「アメリカ合衆国は、我々のイランでの軍事行動を終わらせるため、新しく前より合理的な政権と真剣に協議している」と書いた(太字は原文で全て大文字)。

大統領はさらに、「大きな進展があったが、もし何かしらの理由で、恐らく近く合意に達するはずの合意に至らず、ホルムズ海峡が直ちに『営業中』にならないなら、我々は素敵なイラン『滞在』の締めくくりとして、今ままでわざと『手を付けて』こなかった、彼らの発電所と油田とカーグ島(そして恐らく全ての淡水化プラント!)を全て爆破し、完全に破壊し尽くす」、「これは、旧政権の47年間にわたる『恐怖の支配』の中で、イランが虐殺し殺害した多くの兵士やその他の人々のための報復となる」と書いた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ホルムズ海峡の大部分が封鎖されたままの状態でも、トランプ大統領は対イラン軍事作戦を終わらせる用意があると側近らに伝えたと報じている。

同紙は政権当局者の話として、ホルムズ海峡を武力で再開させる作戦は、トランプ氏が示した4~6週間という時間枠を超えて紛争を長引かせることになると、米大統領と側近たちが判断したと伝えた。

その代わりにトランプ氏は、イラン海軍とミサイル備蓄に大損害を与えた現在の戦闘を終結させ、通商の再開については外交圧力を継続する方向を検討しているという。

BBCは、ホワイトハウスにコメントを求めている。

原油価格は、戦争が5週目に入る中で高止まりしている。ブレント原油先物価格は1バレルあたり約114ドルとなっている。米・イスラエルがイランを攻撃する前日の2月27日、ブレント原油は約72ドルだった。

イギリスではディーゼル価格が2022年12月以来の高値となり、ガソリン価格も2年4カ月ぶりの高水準に達している。ガソリンの平均価格は現在1リットル当たり152ペンス、ディーゼルは181.2ペンスとなっている。

王立自動車クラブ(RAC)の政策担当、サイモン・ウィリアムズ氏はBBCに対し、イラン紛争の開始時と比べ、一般的なガソリン車の給油には10.55ポンド多く、ディーゼル車では21.35ポンド多くかかるようになったと話した。

イランがタンカー攻撃

クウェート石油公社は31日、ドバイ港に停泊していた自国の大型原油タンカーをイランが攻撃したと発表した。船舶に損傷が生じたものの、乗組員24人全員は無事で負傷もなかったという。

攻撃を受けた時、タンカー「アル・サルミ」は満載状態だった。船内では火災が発生したが、間もなくして鎮圧された。

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ当局は、攻撃はドローンによるものだとした。

クウェートは当初、攻撃に伴う原油流出の可能性を警告したが、英海上貿易業務調整機関(UKMTO)は「環境への影響は報告されていない」としている。

ロイター通信によると、ロイズ社と「タンカー・トラッカー」のデータでは、アル・サルミはクウェートとサウジアラビアからの原油200万バレルを積んでいる。ロイズの記録によれば目的地は中国・青島だった。

イランは米との交渉否定、米は「順調」と

イラン外務省のエスマイル・バガエイ報道官は30日、アメリカとの交渉を改めて否定した。報道官は、開戦からの日数を踏まえ、イランは「この31日間、アメリカと何の交渉もしていない」とオンライン声明で述べた。

「アメリカからの交渉要請と一連の提案が、パキスタンを含む特定の仲介者を通じて我々に伝えられただけだ」と報道官は説明。「我々の立場はきわめてはっきりしている。アメリカの軍事的侵略と攻撃が全力で継続している現時点において、我々は、イランの本質を守ることにあらゆる努力と能力を注いでいる」と述べた。

さらに報道官は、「我々は、この1年に満たない間に二度も、外交が裏切られたことを忘れない」と強調した。

これに対してホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は同日の記者会見で、両国の協議は順調で継続中だと述べた。

イラン側の主張と食い違っていることについて記者団に質問されると、報道官は「アメリカ国民は賢いので、47年間『アメリカに死を』と唱えてきたテロリスト政権の言葉を額面通りに受け止めるようなことはしないと思う」と答えた。

また、イランがアメリカと合意する「機会」を拒めば、米軍はイランに「重大な代償」を払わせるための「あらゆる選択肢」をトランプ氏に提供する用意があると警告した。

報道官は、アメリカが協議しているイラン側の人物は、前指導部よりも「舞台裏では合理的に見える」とも述べた。

レヴィット報道官はこのほか、米軍はこれまでに1万1000超の軍事目標を攻撃し、海軍を「壊滅させ」、150隻以上を破壊したと述べた。

また、大統領はイランへの地上部隊投入を可能性として排除していないものの、「外交がトランプ氏の第一選択肢であることに変わりはない」と報道官は付け加えた。

動画説明, 米・イスラエルの攻勢激化、イランも攻撃続ける 沈静化の兆し見えず

イラン外相「米軍を追放すべき時だ」とサウジに

イランのアッバス・アラグチ外相はソーシャルメディア「X」で、サウジアラビアに対し「米軍を追放すべき時だ」と呼びかけた。

外相は、イランがサウジアラビアを「尊重」しており、「兄弟を大事にする国」と見なしていると書いた上で、イランの作戦は「アラブ人にもイラン人にも敬意を払わない敵対的侵略者」を標的にするものだと強調した。

外相は、米空軍の標章が見える破壊された航空機とみられる画像を合わせて投稿し、「我々が彼らの航空司令部に何をしたか見てほしい」と書き込んだ。

米中央軍はこの事案についてまだ公にコメントしていない。BBCはコメントを求めている。

機体に「U.S. AIR FORCE」と書かれた灰色の米空軍機が地上で大破している

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画像説明, イランのアラグチ外相は、この写真と似た写真を「X」に投稿した。この写真は、サウジアラビアの空軍基地で破壊された米軍の早期警戒管制機(AWACS)を写したもので、BBCが29日に本物だと確認した

続く攻撃

イスラエル国防軍(IDF)は同日、イランの首都テヘランで政権関連インフラを標的とした一連の攻撃を完了したと発表した。

これに先立ちイランの複数メディアが、テヘランの一部地域で爆発が起きたと報じていた。

テヘラン市内の消息筋5人はBBCペルシャ語に対し、爆発が起きていると報告。市内西部にいる3人は、激しい爆撃が続いたと話した。

そのうちの1人は、「近くで5~6回、立て続けに空爆があった」と話した。

近郊カラジの住民2人は、カラジでも複数の攻撃があったとBBCペルシャ語に話した。

他方、イラン国営放送は、イランのミサイルがイスラエル北部の工業地域に着弾したと伝えた。

イスラエルのテレビ局およびイランのソーシャルメディアは、これまでも標的となってきたハイファの製油所から煙が上がる様子とされる映像を伝えた。

ロイター通信によるとイスラエル消防当局は、迎撃したイランのミサイルの破片が、製油所内の燃料タンクに命中したと話している。

丸い屋根の背の低い建物が並び、その一つからオレンジ色の炎と巨大な黒煙が上っている。手前にタンクローリーが見える

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画像説明, イスラエルの石油精製所から炎と黒煙が上がった。イスラエル当局は、迎撃したイランのミサイルの破片が落下したためと説明している(30日、ハイファ)

湾岸諸国でも被害

イラク国防省は同日、バグダッド国際空港に隣接するムハンマド・アラー空軍基地が同日未明にミサイル攻撃を受け、イラク空軍の航空機が破壊されたと発表した。負傷者は報告されていないという。

イラク国防省はウェブサイトで、この攻撃を「軍の施設と防衛能力を標的にした卑劣で犯罪的な行為」と非難した。

シリア国営通信によると同日早朝、シリア・アラブ軍はイラク国境付近に位置する複数の軍基地に対する大規模なドローン攻撃を迎撃した。

軍の作戦司令部は国営通信(SANA)に対し、大半のドローンが迎撃・撃墜されたと述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)国防省は、ミサイルおよび無人航空機による脅威に、空軍が対応中だと発表。国内で聞こえる音については、こうした「継続中の対応」によるものだと説明した。

同国防省は国民に対し、「落ち着いて」行動し、「安全確保の指示」に従うよう呼びかけた。

クウェート国営通信は同日、国家警備隊がドローン5機を迎撃したと伝えた。

クウェートではこれに先立ち、クウェートの発電・淡水化施設に対するイランの攻撃でインド出身の作業員が死亡したと電力・水省が発表。クウェート軍は29日には、軍施設がイランのミサイル・ドローン攻撃を受け、軍関係者10人が負傷し、民間物流会社の倉庫も攻撃されたと発表していた。

イスラエル、レバノン攻撃も続ける

青い海と空を背に、建物が密集する市街地で巨大な灰色の煙が上っている

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画像説明, イスラエルは30日、ベイルート南郊ダヒヤ地区への攻撃を続けた

イスラエル軍は、レバノンの首都ベイルートでヒズボラの「テロ関連インフラ」に対する攻撃を開始したと発表した。ヒズボラは、イランが支援するイスラム教シーア派武装組織。30日朝の写真には、レバノンの首都南部の郊外から煙が立ち上る様子が写っている。

レバノンのメディアも、ベイルート南部への新たなイスラエルの攻撃を報じている。

IDFはさらに、レバノンのベカー渓谷(高原)にある複数の村の住民に対し、新しく避難命令を出した。対象地域にはザラヤ、ルベイヤ、ヤフムール、サフメル、カラヤ、ダラフィが含まれる。

IDFのアヴィハイ・アドレイ報道官は、住民に直ちにカラオウン北部へ移動するよう指示。南側への移動は「命の危険を伴う可能性がある」と警告した。

米・イスラエルによるイランとの戦争は地域全体に影響を及ぼしており、レバノンでは百万人以上が避難している。

家族とともにベイルートの自宅を逃れた子供はBBCに、路上で眠ることになったことについて、「恥ずかしい」と話した。

「私たちの戦争ではない」と英首相

キア・スターマー首相は同日、イギリス軍がイランに地上展開することはないと強調した。

中東での戦争にイギリス軍を派遣する可能性について記者団に質問されると、スターマー首相は、「これは私たちの戦争ではなく、巻き込まれるつもりはない」と述べた。

首相はこれまでの政府の対応を擁護し、イギリスは「イギリス国民の生命、イギリスの利益、そしてもちろん地域の同盟国を守るために『防御的行動』を取っている」のだと、強調した。

スターマー首相は、イギリスは今後も自国の利益を守り、ホルムズ海峡の再開に向けて取り組み続けると述べたうえで、「私たちは、この戦争に引きずり込まれたりしない」と言明した。

【解説】民間インフラ攻撃を脅すトランプ氏、それは戦争犯罪の脅しなのか

トム・ベイトマン 米国務省担当特派員

トランプ米大統領は、イランの発電所、油田、海水淡水化施設を爆破すると脅した。もしその攻撃を実施すれば、国際条約や戦時国際法で定義される戦争犯罪に当たる可能性がある。

トランプ氏は30日、トゥルース・ソーシャルで最終通告として、こうした攻撃は47年間にわたりアメリカ人を殺害してきたイラン政権への「報復」だと述べた。

今回の戦争でトランプ氏がこうした内容で脅すのは、これが初めてではない。いわゆる「ルールに基づく世界秩序」の20世紀的なレトリックから、アメリカがいかに大きく逸脱し、転換しているかを示す特異な動きだ。

エネルギー・インフラは軍事的に、あるいは政府に使用されるものだと主張したとしても、それを意図して破壊すれば、市民生活に壊滅的な影響を与える可能性がある。

アメリカとイランはどちらも、国際刑事裁判所(ICC)に加盟していない。そのICCの初代主任検察官ルイス・モレノ=オカンポ氏は先週、イランの発電所を爆撃するというトランプ氏の主張も、イランとイスラエルの双方によるエネルギー・インフラへの攻撃も、いずれも「正当な標的」には当たらないと私に話した。

ローマ規程では「軍事目標ではない民間物を意図的に攻撃すること」は戦争犯罪と定義されていると、モレノ=オカンポ氏は説明した。

ICCは2024年、ロシアによるウクライナのエネルギー施設への攻撃をめぐり、ロシア高官2人を戦争犯罪の疑いで起訴している。

米国務省の顧問弁護士だったブライアン・フィヌケイン氏は30日、ソーシャルメディア「ブルースカイ」で、トランプ氏が「イランのインフラ攻撃について、全面的かつ報復的な枠組みの中で主張している」ことから、「これが戦争犯罪を犯すぞという脅しなのは明確だ」と書いた。

トランプ氏はかつて、自分には「国際法は必要ない」、自分自身の「道徳心」に従うと発言している。

大統領が脅している内容は戦争犯罪になり得るという指摘について、BBCがホワイトハウスに問い合わせたところ、ホワイトハウス高官は「イランのテロリスト政権は、47年間にわたり、自国民が抑圧的支配に反対して声を上げただけで残虐に殺害し、『市民生活に壊滅的影響』をもたらしてきた」と回答した。

ホワイトハウスはさらに、「軍事作戦『壮絶な怒り』の軍事目標を達成することで、トランプ大統領はイランがアメリカおよび同盟国にもたらす短期・長期の脅威を排除し、地域全体をより安全かつ安定させている」と述べた。

同日のホワイトハウス会見で、レヴィット報道官は記者団に対し、「当然ながら、この政権も米軍も常に法の範囲内で行動する」と述べた。

報道官は、淡水化プラントを爆撃する目的は何かという質問には答えなかった。