【解説】 ストリーティング保健相にとって決断の時 党首選に挑むのか……BBC政治編集長

屋外でカメラに向かってわずかに口を開いている、紺色のスーツ姿のストリーティング氏。髪を短く刈り込んでいる

画像提供, Leon Neal/Getty Images

画像説明, 首相官邸を訪れたストリーティング保健相(13日午前、ロンドン)
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クリス・メイソン BBC政治編集長

イギリス議会の開会式は、最もイギリスらしい行事の一つだ。13日の式典には、王族、儀式、そして雨という、いかにもイギリス的な要素がほとんどそろっていた。

しかし、そういういかにもな内容に加えて、異例の要素もわずかにどころではなく、かなり含まれていた。

国王が議会に到着するかなり前、ウェス・ストリーティング保健相は首相官邸で首相とコーヒーを飲んでいた。

あっという間の訪問だった。ストリーティング氏は官邸の玄関から入ったわずか17分後に、官邸を出た。

中で何があったのか? それはわからないが、用事はすぐに終わった。それは明らかだ。

保健相の複数の側近は、ストリーティング氏が早ければ14日にも労働党党首の座をめぐり、キア・スターマー首相に挑むはずだと話している。

13日のロンドン政界には、こうした水面下の駆け引きだけではなく、国王の議会到着という華やかな場面もあった。上院の王座から国王は、37の法案および法案草案について政府の方針を示した。

議会開会式は本来ならば、そこから約1年間の政府の施政方針を示す日だ。

しかし現在の政府を率いている人は、残り1年よりはるかに手前で首相の座を降りるかもしれない。

今回の国王演説はそもそも、5月7日の地方選挙を受けて、政府として態勢の立て直しが必要になるだろうと政府が事前に想定していたからこそ、13日に設定されたのだ。

首相は下院議員たちに対し、演説が提示するのは「急進的な政策アジェンダ」であって、「イギリスにとって新しい方向性を示すものだ」と話した。

首相は7日の地方選大敗後に大胆な変化を約束したが、この国王演説はそれをどう反映しているのか。そう尋ねられると、首相報道官は「首相はここ数日の発言で、変化への決意を示している」と答えた。

つまりは、再起動(reboot)すると? しかし首相は今、追い出される(get the boot)ことを恐れている。

下院での説明を終えると、スターマー氏は地道な説得活動に臨んだ。自分を支持する閣僚たちと一緒に首相は議事堂内の喫茶室を回り、議事堂内の自分のオフィスに複数の議員を招いた。

首相の意向は、はっきりしていた。首相は戦うつもりで、党首選となれば相手が誰でも受けて立つ。しかし、そもそもそのような挑戦をしようとすること自体が無責任だと、首相は考えている。

前の保守党政権末期、スターマー氏は最大野党の党首として、保守党による混沌(こんとん)を厳しく批判し続けた。そして、自分はその混乱を解消する存在なのだと、常にそう自認してきた。

党首選を行うとなれば、政府は身動きがとれなくなり、労働党内は混沌に陥ると、首相は力説する。この主張をもって、ストリーティング氏やその他の挑戦者への支持が拡大するのを、抑え込めるのだろうか。

しかし首相は、多くの議員が今や自分を「敗者」と見ていることは承知している。イングランド、スコットランド、ウェールズで7日に行われた地方選挙で労働党があまりにひどく大敗した、その大きな要因が自分自身だと、党内でそう思われていることも、首相はわかっている。

党首の座への挑戦を模索する側にとっては、スターマー氏とは一線を画した、労働党にとって魅力的な、代わりの政策アジェンダを提示できるかが課題となる。それによって労働党の議員や党員にアピールし、自分はスターマー氏より人気が得られると説得できるかどうかだ。

今後24時間は重大な局面となる。ストリーティング氏が14日にも挑戦に踏み切るのか、そしてその場合どういう内容をどういう態度や口調で発表するのかが問われる。

首相にとっては、背水の陣だ。

そして党首の座を狙う誰にとっても、これは背水の陣だ。