エボラ出血熱、コンゴ民主共和国で流行 WHOが「国際的な緊急事態」宣言

白いシャツを着た人が、非接触型赤外線体温計を患者の顔のすぐそばに当てている。患者はカメラから目をそらしている。住民は青いスカーフを巻き、赤、青、白の模様が入ったドレスを着ている。ドレスには赤いビーズがあしらわれている

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画像説明, 住民に体温計を当てる保健スタッフ。WHOはエボラウイルスがコンゴ民主共和国を越えて広がっているとしている
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トーマス・ムクワナ(アフリカ特派員、ナイロビ)、ヤン・ティアン

コンゴ民主共和国(旧ザイール)でエボラ出血熱のアウトブレイク(大流行)が発生している。世界保健機関(WHO)は17日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言した。

WHOによると、コンゴ民主共和国の東部イトゥリ州で感染が急拡大している。これまでに、感染が疑われるケースが246件ほど、死者が80人報告されている。パンデミック(世界的大流行)の緊急事態の基準には達していないという。

ただ、現時点で確認・報告されているよりも「はるかに大規模な感染流行」になる可能性があり、現地や地域での感染拡大のリスクはかなり高いと、WHOは警告している。

WHOによると、現在の流行はエボラウイルスの「ブンディブギョ株」が引き起こしている。この株に対する承認された治療薬やワクチンは存在しない。

初期症状には発熱、筋肉痛、倦怠(けんたい)感、頭痛、喉の痛みがある。その後、嘔吐(おうと)、下痢、発疹、出血がみられる。

WHOの説明では、検査で確認された感染者は現在8人となっている。そのほか、感染が疑われるケースや死亡例が、イトゥリ州の州都ブニアと、金鉱が盛んなモングワルとルワンパラの三つの保健区域で確認されているという。

首都キンシャサでも感染者が1人確認されている。イトゥリ州から戻った人だとされる。

WHOによると、エボラウイルスはコンゴ民主共和国を越えて広がっており、隣国ウガンダでも2件の感染が確認された。ウガンダ当局は、男性(59)が14日に死亡し、検査で陽性と確認されていたと発表した。

ウガンダ政府は声明で、死亡した男性はコンゴ民主共和国の国民で、遺体はすでに同国に送られたと説明した。

AFP通信は17日、コンゴ民主共和国の反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」が支配する東部の都市ゴマでも、エボラ出血熱の症例1件を検査機関が確認したと報じた。

BBCがアメリカで提携するCBSは、情報筋の話として、コンゴ民主共和国で少なくとも6人のアメリカ人がエボラウイルスにさらされ、うち1人は症状があると報じた。感染が確認された人はいないという。

医療ニュースサイトのSTATニュースは、米政府がこれらの人々を国外に移動させようとしており、ドイツにある軍事基地が移動先になる可能性があると伝えた。

アメリカの疾病対策センター(CDC)は、コンゴ民主共和国とウガンダにスタッフを追加派遣する予定だと発表した。在コンゴ民主共和国の米大使館は、イトゥリ州への移動を控えるよう呼びかける医療警報を発出した。

BBCはCDCにコメントを求めている。

活発な移動などがリスク高める

WHOは、感染拡大のリスクを高めている要素として、コンゴ民主共和国の現在の治安情勢と人道危機、人口移動の活発さ、感染の多いホットスポットが都市部に位置していること、多数の非公式な医療施設が地域に存在していることなどを挙げている。

同国と国境を接する国々は、貿易や人々の往来があるため、高リスクとみなされている。

ルワンダは、「予防措置」として、コンゴ民主共和国との国境沿いでの検疫を強化すると発表した。

ルワンダ保健省は、監視体制を強化し、保健チームが警戒していると説明。「早期検出と、必要に応じた迅速な対応を確実にする」としている。

保健当局者が別の当局者の助けを借りながら、黄色い防護服や白い防護用具を着用している

画像提供, Reuters

画像説明, コンゴ民主共和国ベニのエボラ治療センターで、防護服を着用する保健当局者。同国では2018~2020年にエボラ出血熱が大流行し約2300人が死亡した

WHOは、コンゴ民主共和国とウガンダに対し、緊急対策本部を設置し、感染状況の監視、接触者の追跡、感染予防措置の実施に取り組むよう勧告した。

また、感染拡大を最小限に抑えるため、確定診断を受けた患者は直ちに隔離し、少なくとも48時間の間隔を空けて実施した2回のブンディブギョ・ウイルス用の検査で陰性となるまで治療を継続すべきだとした。

確定診断例が確認されている地域と国境を接する国々の政府には、監視体制と保健報告の強化が求められている。

一方、WHOは感染地域外の国々に対し、国境の閉鎖や渡航・貿易の制限をすべきではないと今日ちょぅ。「そのような措置は通常、恐怖から実施されるもので、科学的根拠はない」とした。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、今回の流行について、現時点では「感染者の実数や地理的な広がりに大きな不確実性がある」と警告した。

エボラ出血熱とは? どのように感染する?

・今回の流行の原因は? エボラ出血熱はウイルスによって引き起こされる病気だ。発症はまれだが、症状は深刻で、多くの場合で死に至る。流行の原因となるエボラウイルスは3種あり、今回のは「ブンディブギョ株」と呼ばれるものだ

・どうやって感染する? 血液など感染者の体液や吐しゃ物などを介して、人から人へと感染する

・致死率は? 過去のエボラウイルスのブンディブギョ株の流行では、感染者の約30%が死亡した

・潜伏期間は?  感染後2~21日で症状が現れる

・どんな症状が出る?  初期症状は突然現れ、発熱、頭痛、倦怠感など、インフルエンザに似た症状が見られる。病気が進行すると、嘔吐や下痢が現れ、臓器が機能しなくなる。一部の患者では、内出血や外出血が見られる

・発生源は?  流行は、オオコウモリ(フルーツコウモリ)など感染した動物から人が感染することで始まる

・ワクチンはある? ザイール株に対するワクチンはある。だが、今回のブンディブギョ株に対するものはない

エボラ出血熱が流行している場所を示しているコンゴ民主共和国の地図。東部イトゥリ州が左上部の囲み内で拡大され、モングワル、ルワンパラの2カ所が流行発生地として示されている。コンゴ民主共和国全体の地図では中部ブラペが示され、「2025年にカサイ州で流行発生」との注釈が付けられている。同国の周辺国として、南スーダン、ウガンダ、タンザニア、アンゴラが示されている

エボラウイルスは、1976年に現在のコンゴ民主共和国で初めて発見された。コウモリから感染が広がったと考えられている。エボラ出血熱の流行は、同国で17回目。

WHOによると、エボラ出血熱に対する確立された治療法はなく、平均致死率は約50%。

アフリカのCDCは、ルワンパラとブニアが都市部であることと、モングワルで鉱業活動が行われていることが、感染拡大のリスクを高めているとの懸念を示している。

同CDCのジーン・カセヤ事務局長は、感染者が出ている地域と近隣諸国の間で「大規模な人口移動」があることも、地域的な連携の不可欠さを示していると付け加えた。

アフリカ諸国では過去50年間で、約1万5000人がエボラウイルスで死亡している。

コンゴ民主共和国では、2018~2020年に同国史上最悪の流行が発生。約2300人が死亡した。

昨年も都市から離れた地域で流行が発生し、45人が死亡した。

追加取材:ジェイムズ・ギャラガー