ロンドンで対立する2グループの大規模デモが同時に 43人逮捕と警察発表

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ダニエル・サンドフォード内政担当編集委員
ロンドン中心部で16日、対立する二つの抗議集会が開かれ、ロンドン警視庁は両者を引き離すため、総費用450万ポンドに上る大規模な警備作戦を実施した。逮捕者は43人に上ったという。
警察は4000人以上の警察官を投入し、極右政治団体「イングランド防衛同盟(EDL)」の創設者トミー・ロビンソン氏が主導する集会と、親パレスチナのデモ隊の間に、緩衝区域となるいわゆる「無人地帯」を設けた。
ロンドン中心部の主要な観光地を訪れていた多くの観光客は、この措置に戸惑う様子だった。
観光名所トラファルガー広場に立つネルソン記念柱は金属柵で囲まれ、ウェールズから派遣された機動隊が、広場からバッキンガム宮殿へと続く大通りパル・マルや目抜き通りリージェント・ストリートへの通行を阻止した。トラファルガー広場からバッキンガム宮殿まで、パル・マルには警察車両が並んだ。
パル・マルからセントジェイムズ公園を挟み、首相官邸のあるダウニング街に近いチャーチル博物館の上の階段では、高さ2メートルの金属柵が設置され、外務省から官庁街ホワイトホールへ向かう道路が封鎖された。
それぞれの行進に参加した抗議者同士の、重大な衝突はなかった。
親パレスチナの抗議者は、1948~49年のイスラエル建国をめぐる第1次中東戦争で地元を追われたパレスチナ人の大移動を意味する「ナクバ(アラビア語で「大災害」の意味)」を記憶するため、毎年5月15日に最も近い週末に行進している。
しかし、今年の行進について主催者が警察と協議を始めた時点で、5月16日はすでに反イスラム活動家のロビンソン氏(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)が主導する「ユナイト・ザ・キングダム(王国を連合させろ)」行進の実施日として予約されていた。行進の名称は、イギリスを意味する「ユナイテッド・キングダム(連合王国)」のもじり。
交渉の結果、両方の行進が同じ日に認められたが、警察にとっては大規模な警備作戦の展開が必要となった。16日にはウェンブリー・スタジアムで、サッカーのFAカップ決勝も行われていた。
このためロンドン警視庁は公共の秩序維持のため、2000年代初頭のメーデー暴動以来、有数の規模となる警備作戦を展開する必要があった。
作戦の目的は、ヘイトスピーチ法に違反しない限り、人は政治的意見を表明できるという言論の自由の原則を維持することだった。
しかし、昨年9月にロビンソン氏がロンドンで行進を開催した時には、約15万人が集まり、一部の支持者が官庁街ホワイトホールで反人種差別活動家に近づこうとして警察と衝突した。それだけに警察は今回、神経をとがらせていた。

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16日に動員された警官数千人のうち、660人はイングランドとウェールズの他地域から応援のため派遣されていた。
警察は、集会の中心地となるトラファルガー広場、バッキンガム宮殿、議会広場の間に緩衝区域を設けた。
ロビンソン氏主催の抗議のデモ隊は、トラファルガー広場より東側にあるホルボーンからストランド通りを西へ進んでホワイトホールを下り、議会広場まで行進して集会を行うことが認められた。
逆に親パレスチナの行進参加者の移動はほぼ逆向きで、トラファルガー広場の西にあるナイツブリッジから東へ進み、ピカデリー・サーカスを通り、パル・マルへ向かって行進し、演説することが認められた。
こうして双方を引き離すための警察の計画は、概ね機能したとみられる。
警察は今回、抗議活動の警備として初めて、ユーストン駅とキングス・クロス・セント・パンクラス駅にリアルタイム顔認識カメラを設置した。「ユナイト・ザ・キングダム」の参加者たちは、こうした駅からロンドンに到着する可能性が高いとみられていた。
16日の早い段階で逮捕された1人は、中部バーミンガムで14日に起きた事件に関与した疑いで指名手配されていた人物だった。バーミンガムの事件では、イギリス各地の街灯に旗を掲げる活動をしている「レイズ・ザ・カラーズ(旗を上げろ)」グループに関連する口論の後、車で人がはねられた。
ロンドンでは現地時間16日午後7時30分までに、二つの抗議行動で43人が逮捕され、FAカップ決勝でも22人が逮捕された。

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ロンドン警視庁は17日朝、「逮捕者のうち20人はユナイト・ザ・キングダムに関連し、12人はナクバの抗議に関連している」と発表した。「残る11人はどちらのグループにも属していないか、所属の確認ができていない」という。
また、11件の逮捕はヘイト犯罪の疑いに関連しており、そのうち2件はナクバの抗議、9件は「ユナイト・ザ・キングダム」に関連しているとした。
さらに、ナクバの行進で発生したヘイト犯罪疑いの事案7件についても捜査が続いているとしている。

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16日午後を通じて警察ヘリコプターが上空から抗議の様子を監視し、警察犬は近くの「ホース・ガーズ・パレード」(近衛騎兵隊の衛兵交代式が開かれる広場)に待機していた。
また、新しく導入された装甲車サンドキャットが目立たない形で配備されていたものの、これは警官たちが「極度の暴力」に直面した場合にのみに使うものだと警察は説明した。
警察の初期推計では、「ユナイト・ザ・キングダム」の参加者は約6万人で、昨年9月の行進の半数以下だった。
実際のところ、16日の抗議では以前ほどの緊張感は見られなかった。
海外からの著名な講演者の一部は、入国が認められなかった。その中には、コロンビア系アメリカ人の反イスラム系インフルエンサー、ヴァレンティナ・ゴメス氏や、ポーランドのドミニク・タルチンスキ欧州議会議員、ロビンソン氏を長年支持してきたカナダ人エズラ・レヴァント氏が含まれる。
米富豪イーロン・マスク氏は、昨年9月の集会ではビデオ通話で「反撃するか、滅びるかだ」と演説していたが、今回はロビンソン氏がその支持に感謝したものの、本人の姿はなかった。








