米、グリーンランドでの軍事基地新設に向けデンマークと交渉進める

緑色の防寒コートを着たヴァンス氏が、雪原に立っている

画像提供, Reuters

画像説明, J・D・ヴァンス米副大統領は3月、グリーンランドに米軍が唯一置く基地を視察した
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ダニエル・ブッシュ米ワシントン特派員

アメリカがデンマークの自治領グリーンランドにおける軍事プレゼンスを拡大するため、同国と定期的に交渉を重ねていることが、複数の関係者の話から明らかになった。ここ数カ月で、双方の協議は進展しているという。

アメリカ政府高官らは、グリーンランド南部に新たな基地を3カ所開設することを目指している。これは、ドナルド・トランプ大統領がグリーンランドを武力で奪取すると脅したことで生じた外交危機を解決する動きの一環だ。

トランプ氏は1月、ロシアや中国がグリーンランドを掌握するのを防ぐため、アメリカは同地域を「所有すべきだ」と述べた。また、「簡単な方法」でやるか、さもなければ「難しい方法」でやるとも付け足した。

ホワイトハウスは、政権がグリーンランドおよびデンマークと高官級の協議を行っていることを認めたが、交渉の詳細についてはコメントを避けた。ホワイトハウス当局者はBBCに対し、協議が正しい方向に向かっていると、政権は非常に楽観的だと述べた。

デンマークは以前、グリーンランドでの米軍基地増設に向けた協議に前向きな姿勢を示していた。同国の外務省も、アメリカとの協議が進んでいると認めた。デンマーク外務省の報道官は、「アメリカとの間で外交的な協議ルートが継続している。外務省としては、現時点でこれ以上の詳細に立ち入らない」と述べた。

交渉内容を知る関係者1人によると、米高官らは、3カ所の新しい軍事基地をアメリカの正式な主権領域とする枠組みを提案している。

BBCの取材に応じた関係者らによると、基地はいずれもグリーンランド南部に設置され、「GIUKギャップ」として知られる、グリーンランドとアイスランド、イギリスの間に広がる北大西洋一帯において、想定され得るロシアおよび中国の海上活動を監視することに重点を置く。

関係筋は、双方はまだ正式な合意には至っておらず、最終的な基地の数は変更される可能性があるとしている。新設される基地のうち一つは、かつて小規模な空港を備えた米軍基地があった、ナルサルスアークに置かれる見通しだ。他の2カ所についても、飛行場や港湾など既存のインフラがあるグリーンランド国内の用地に設けられる可能性が高い。専門家らは、新しい施設を建設するよりも低コストで改修できると指摘している。

米高官らは協議の中で、グリーンランドの支配権を何らかの形で奪取する可能性については、持ち出していない。こうした行為については、デンマークと北大西洋条約機構(NATO)が公に拒否してきた。

水面下での交渉

トランプ氏の脅しにもかかわらず、両国はここ数カ月、合意に向けて積極的に取り組んできた。

協議は、米政府関係者からなる、少人数の作業部会に限定されて行われてきた。関係者らは、政権がイランでの戦争対応に追われるなか、表舞台を避けながら交渉を進め、前進を重ねてきた。

アメリカ北方軍のグレゴリー・ギヨー司令官は3月の議会証言で、この交渉の大枠について言及した。ギヨー氏は、アメリカが新たな基地の開設を目指していると述べた。一方で、協議に近い関係者らは、ここ数カ月にわたって進展してきた定期的な高官級会合の実態を示す新たな詳細を明らかにしている。

この微妙な外交努力を主導しているのは、国務省の高官、マイケル・ニーダム氏だ。ニーダム氏は、トランプ氏を満足させつつ、国境防衛をめぐるデンマークの譲れない一線を尊重する合意をまとめる任務を担っている。

協議を知る外交高官の1人は、「ニーダムがグリーンランド問題を主導している」と述べた。また、この人物は舞台裏について、「政権は非常に専門的に対応している」と説明した。

複数の関係者によると、作業チームは1月中旬以降、少なくとも5回、会合を開いている。ニーダム氏には通常、国務省または国家安全保障会議(NSC)の高官1人か2人が同行しているという。関係筋によると、協議の場には、デンマークのイェスパー・ムラー・ソレンセン駐米大使や、ワシントンに駐在するグリーンランドの筆頭外交官であるヤコブ・イスボセトセン氏が出席しているという。

一方、グリーンランド担当の大統領特別代表を務めているジェフ・ランドリー・ルイジアナ州知事(共和党)はこれらの交渉には参加しておらず、外交プロセスからほぼ外れているという。

匿名を条件に取材に応じたランドリー氏に近しい人物は、「彼は、力を誇示してグリーンランドを安全保障上の資産として掌握できる、という考えをあおる、どちらかといえば応援団のような存在になるはずだった」と述べた。ランドリー氏は「実際の協議の場に一度も出席したことがない」という。

ランドリー氏の事務所は、コメントの要請に応じなかった。

アメリカは現在、グリーンランドに1カ所、軍事基地を置いている。冷戦の最盛期には、およそ17カ所に軍事施設があった。グリーンランド北西部にあるピトゥフィク宇宙基地は、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のためにミサイルを監視しているが、海上監視を行う体制にはなっていない。

アメリカの現職および元政府高官の一部や、北極圏の安全保障専門家らは、トランプ政権はNATOの同盟国をこれほど強い言葉で脅すことなく、グリーンランドをめぐる自国の利益を追求できたはずだと、BBCに対して話した。

国防総省の元高官の1人は、「比較的容易に交渉できるものを得たいだけなのに、なぜ軍事作戦や侵攻で同盟国を脅す必要があるのか」と述べた。

一方で、アメリカとデンマークの協力関係を評価する声もあった。2020~2024年に米北方軍およびNORADの司令官を務めた退役将校のグレン・バンハーク氏は、「アメリカとその同盟国が空白を残すところはどこであれ、その空白はしばしば中国やロシアによって埋められる」と指摘した。

交渉担当者らは水面下で、アメリカとデンマークの間で数十年にわたり存在する安全保障協定の枠組みの下、妥協点を見いだそうとしてきた。

1951年の協定は、グリーンランドにおけるアメリカの軍事活動拡大に広い裁量を与えている。この地域でのアメリカ軍の拡張にはデンマーク政府の承認が必要だが、北極圏の安全保障専門家らによると、デンマークは歴史的にアメリカの軍事活動を支持してきており、駐留拡大の要請を拒否したことは一度もないという。

ワシントンにあるグリーンランド自治政府の事務所はコメントを控えた。米国務省もコメントを控えた。

トランプ氏は大統領1期目の在任中、グリーンランドへのアメリカのアクセス拡大に関心を示していた。しかし、その関心の再燃は今年に入ってから外交危機を引き起こし、NATO加盟国とトランプ政権との間の緊張を浮き彫りにした。