【解説】 日本のイベント開催能力は世界有数、しかしアジア大会は混乱を極めた

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森来実(もり・くるみ)東京特派員、出海一生
オリンピックにしても、東京で毎年開催されるビデオゲームの展示会にしても、日本は大規模国際イベントの開催について確かな実績を誇っている。しかし、名古屋および愛知県で開かれた今年のアジア競技大会(アジア大会)では、さまざまな問題が目立った。
例えば、外交上の失策、輸送上のミス、宿泊施設の混乱だ。インターネットでは、「史上最悪の大会」だとし、「徹底的な調査」を求めるコメントもあった。
大阪体育大学でスポーツイベントを研究している冨山浩三教授は、運営側が不測の事態に対応できなかったと考えている。
「今回の問題によって、日本のスポーツイベント運営に対する国際的な信頼が損なわれれば、今後の国際大会の招致にも影響を与えかねない」と冨山氏は警告する。
アジア大会組織委員会の大参孝彰・事務局次長は、予想しなかったさまざまな問題に直面したことを認めつつ、寄せられた意見を受け止め、改善に努めたと主張した。
次から次へと
今回の大会では、参加者らは開幕前から、宿泊施設が少なすぎるし、質も低いと不満を漏らしていた。
組織委はコスト削減のため、従来型の選手村の建設をやめ、名古屋市内のホテルやコンテナ型宿泊施設に選手を宿泊させた。韓国バスケットボール協会の幹部は、コンテナをあてがわれた長身選手らが「ベッドの上で足を伸ばすことさえできない」と批判した。
開幕直前になって参加者の総数が急増し、名古屋市の収容能力の限界に達した。不足分を補うため、1500室の客室を備えたイタリアのクルーズ船が利用された。
大参氏がBBCに説明した内容によると、組織委は当初、開催市との契約に基づいて最大1万5000人の選手・関係者らの宿泊施設を手配した。しかし、競技の追加によって宿泊人数が2000人増え、計1万7000人になったという。
組織委は当初、直前の追加に対応できる宿泊施設が「まったくない」とし、各自で手配するよう伝えた。だがその後、方針を転換。「1万7000人超」の参加者全員に「大会にふさわしい宿泊施設」の提供を約束する声明を、アジア・オリンピック評議会と共同で発表した。

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これは問題の始まりでしかなかった。
大会期間中、選手らはバスで間違った会場に運ばれた。男子ホッケーの会場では、韓国の試合で北朝鮮の国歌が流れた。男子サッカーの表彰式では、優勝した韓国の国旗がうまく揚がらなかった。台湾の運動部長(スポーツ相)は、歓迎式典への出席を一時拒否された。
大会終盤、ボランティアたちは、閉会式への無料招待のメールを受け取った。だが組織委はその後、無料招待はまだ検討中で未承認だとした。
大参氏は、参加者数でパリ五輪を上回ったこの大会で、一連の出来事によって一部の代表団に多大な不便をもたらしたと認めた。
「これほどの規模のイベントを開催・運営することは、私たちにとって大きな挑戦だった。毎日、予期しないさまざま問題や課題に対処した」
「大会期間中、私たちは実際に施設を利用した選手たちからのフィードバックにもしっかりと耳を傾け、必要な改善策や対策を迅速に実施した」

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「圧倒的に安い」
これらの問題が表面化し始めるとすぐ、日本のメディアは、会場運営を担うフランス企業「GLイベンツ」の日本法人をやり玉に挙げた。
GLイベンツは、この大会で630億円の契約を獲得した。日本で長年にわたりスポーツイベントの運営に成功してきた広告大手・電通グループ以外の企業による契約締結だった。電通グループは、東京五輪・パラリンピックをめぐる談合事件で独占禁止法違反(不当な取引制限)で有罪とされ、候補から外れていた。
共同通信が情報筋の話として報じたところでは、GLイベンツは競合他社より圧倒的に安かったという。
東京新聞は最近、トラブルが続出した背景には、経費削減が絶対的使命になっていることがあるとの見方を報じた。また、「GLには現場を管理する能力がない」とする、パビリオン建設の下請け業者のコメントも伝えた。
しかし、組織委の大参氏は、GLイベンツについて、「パリ・オリンピックを含め、国際スポーツイベントの運営経験がある」と、BBCの取材に対して強調。「GLイベンツと徹底的な協議と調整をするなど、競技開始までに必要な競技環境が整っていたと我々は考えている」と話した。
前出の冨山教授は、「GLイベントについて『国際大会の経験が十分ではなかった』と単純に評価するのは適切ではない」と説明。問題は同社に与えられた責任範囲が「非常に広かった」ことだったと述べた。
「また、今回は競争入札ではなく随意契約だったことから、主催者側が受託者の能力をどのような基準で評価し、契約後にどのように監督していたのかも重要な検証事項だ」
BBCはGLイベンツに繰り返しコメントを求めたが、返事がなかった。

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未来への希望
大会期間中、次々と発生する問題に慌てて対応する組織委のスタッフの姿は、日本の主要イベントで世界が期待しているものとは大きく違っているように感じた。
それは、組織委が示したかっただろう、ほとんど芸術の域に達している日本の心からの「おもてなし」の精神とも、かけ離れている。
組織委は、韓国の代表団に影響を与えた一連の不手際について、同国に正式に謝罪する書簡を送るに至った。
それでも、アジア・オリンピック評議会のフセイン・アル・ムサラム事務総長は、水泳、重量挙げ、射撃などで54もの世界記録が生まれたことを挙げ、大会は大成功だったと強調した。
そして、「この成果は、組織委が選手たちのために最高の環境を整えてくれたおかげだ」と評価。「選手たちは、よい睡眠が取れなければパフォーマンスを発揮できないし、適切な交通手段がなければパフォーマンスを発揮できない」とした。
大会は終わったかもしれないが、問題は終わっていない。
現在開催中のパラリンピックでも、三つの競技で間違った国歌が演奏されるなど、トラブルが続いている。組織委の会長代行を務める名古屋市の広沢一郎市長は、「再度トラブルが起きたのはいただけない」と述べ、陳謝した。
冨山教授は、今後のスポーツイベントの運営に携わる人たちは、今回のことを教訓とし、より質の高い大会を開催できる仕組みをつくっていくことが重要だとしている。











