車で襲われたとされる豪議員、両脚を失う 逮捕された男性が初出廷

短いブロンドの髪で、黒縁メガネをかけ、水色のジャケットを着た女性
画像説明, ヘレン・ヘインズ議員(9月、議会議事堂)
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ラナ・ラム記者(シドニー)、ケイティ・ワトソン・オーストラリア特派員

オーストラリア・ヴィクトリア州で、連邦下院のヘレン・ヘインズ議員(65、無所属)が車で襲われたとされる事件で、同議員が両脚を失ったと、夫のフィル・ヘインズ氏が21日、明らかにした。

フィル氏は、「恐ろしい事件」によりヘインズ議員は重傷を負ったものの、「心身ともに健康だ」と述べた。さらに、「この事件で唯一良い知らせは、彼女が生きているということだ」と付け加えた。

ヘインズ議員を襲った疑いがもたれているブレンダン・ニュージェント被告(43)は複数の罪に問われており、21日に初出廷した。

被告は、ヴィクトリア州ワンガラッタにあるヘインズ議員の選挙区事務所の外で、自身が所有するトヨタ・ランドクルーザーで同議員をはねたとされ、その直後に逮捕された。

タキシード姿の男性と黒っぽいドレス姿の女性が並んで笑顔で立っている
画像説明, ヘインズ議員(右)と夫フィル氏。まもなく結婚40周年を迎えるという

ヘインズ議員は現在、メルボルンで治療を受けている。同議員は事件直後に手術を受け、片脚を失ったが、21日に夫のフィル氏が記者会見で語ったところによると、同日朝の時点で、もう片方の脚も失ったという。

「回復への道のりは長く困難なものになるだろうが、彼女は闘志あふれる人だと私たちは知っている」と、フィル氏は記者団に述べた。

「彼女は意志の強い人なので、私たちの支えと愛情があれば、回復に向けて最善を尽くしてくれるだろう。それが私たちの願いだ」

フィル氏は、病院スタッフや、ヘインズ議員を気遣ってくれたオーストラリア国内外の人々に感謝の意を表した。また、同議員を支援したいという人々には、代わりに慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」に寄付してほしいと呼びかけ、「ヘレンには引き続き愛を送ってほしい」と述べた。

ニュージェント被告は、危険運転致傷、故意に重傷を負わせた行為、および連邦公務員への傷害の3件の罪状で起訴され、21日午前に裁判所に出廷した。警察は、殺人未遂を含む罪状が追加される可能性があると述べた。

事件現場近くの町タラウィンギー出身で、環境活動家として知られる被告は、短い法廷審理の間、終始無言で感情を表に出さなかった。

被告は保釈を申請せず、来年2月に再び出廷する予定だ。裁判資料によると、被告は大麻の栽培と所持の罪でも起訴されている。

ニュージェント被告の弁護人は、同被告に「精神的な健康上の問題」があると述べたが、詳細は明らかにしなかった。

弁護人はまた、ニュージェント被告が脊髄の炎症によって引き起こされる特発性の横断性脊髄炎というまれな神経疾患を患っていると述べた。

ヴィクトリア州警察は、オーストラリア連邦警察(AFP)の支援を受けて捜査を継続している。動機はまだ解明されていないとしている。

州警察のマイク・ブッシュ長官は、「我々が意図的な攻撃だと主張するこの事件の動機は、捜査の中心となる重要な要素だ」と述べた。

「我々はあらゆる要素、側面、そして可能性を探求し続け、その解明に努める。その成果が明らかになった際には、法廷で提示する」

黒っぽい服を着たひげを生やした被告が前を見ている。顔の半分は柱で隠れている。手前に黒い服の人たちが描かれている
画像説明, ニュージェント被告の法廷スケッチ画

警察によると、ニュージェント被告は警察の監視対象ではなかった。また、事件以前には、ヘインズ議員に対する脅威に関する情報は一切なかったという。

捜査当局はまた、薬物使用や投薬が事件に関係していたかどうか、また被告と議員の間に個人的なつながりがあったかも調べている。

ニュージェント被告の家族は先に声明を発表し、家族とヘインズ議員は長年の友人だったと述べた。家族は今回の襲撃事件を、「破滅的で理解しがたい」と表現した。

事件は現地時間19日午後3時35分ごろに発生した。車がヘインズ氏に衝突した直後、居合わせた人々がニュージェント被告を車から引きずり出し、身柄を拘束した。

政治的暴力がまれなオーストラリアで起きたこの事件には、ワンガラッタの地域社会だけでなく、より広範なオーストラリア政界も衝撃を受けている。

2019年に初当選し、同僚からも高く評価されているヘインズ議員に対しては、政界のあらゆる立場の指導者らが称賛した。

同国のアンソニー・アルバニージー首相は、事件以来、フィル氏と数回話をしたと述べた。

アルバニージー氏は公共放送ABCのインタビューで、女性政治家に対する脅迫は、レイプの脅しなど「異なる形の誹謗(ひぼう)中傷と攻撃」によって特徴づけられると述べた。

警察によると、オーストラリアでは近年、「高位の公務員」に対する脅迫事件が増加傾向にあり、ほぼ毎週1人が、こうした犯罪で起訴されているという。

この事件は、連邦議会議員の警備レベルについての議論も巻き起こした。

連邦警察は、国内の連邦議員226人全員を個別に警護するには「途方もない」人員が必要になると強調。それぞれの議員の役職やと周囲の脅威状況に基づいて、身辺警護の必要性を判断するとした。

フィル氏と共に記者会見に臨んだオーストラリアのサム・モスティン総督は、「今こそ私たちは立ち止まり、より良い人間になることを選択するべきだ」と述べた。

「もしヘレン(ヘインズ議員)がこの恐ろしい襲撃の当事者でなかったらやっていたであろうことを、我々もするべきだ。それは、今回の出来事でひどく苦しんでいる人々に手を差し伸べることだ」

「良識という筋肉を鍛えることを学び、あるいは改めて学ぶことが一番重要だ」