病院は生物学的性別に基づく施設利用を 英保健当局が新指針、ジェンダー中立空間の確保も強調

医療従事者に誘導されている、病院着を着た人の後ろ姿
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アリソン・ホルト社会問題編集長、ジェイムズ・メリー社会問題シニアプロデューサー

英国民保健サービス・イングランド(NHSE)はこのほど、トランスジェンダーの人々は、自認する性別ではなく生物学的性別に基づいた病棟または病室で治療を受けるべきだとする新たなガイドラインを発表した。

一方で、これが「臨床的に適切でない」場合には代替措置を講じ、すべての患者の尊厳と安全を維持すべきだとしている。

新ガイドラインはまた、職員向け施設は生物学的性別に基づいて利用されるべきだと定めたうえで、医療機関は個室トイレなど、男女別の施設に代わる十分な選択肢を確実に提供すべきだとしている。

以前のNHSEのガイドラインでは、患者と職員は性自認に基づいて病棟に収容されたり、施設を利用したりできると示唆されていた。つまり、トランスジェンダー女性は女性用病棟の利用を、トランスジェンダー男性は男性用病棟の利用を、それぞれ選ぶことができた。

しかしこのガイドラインは、昨年4月の英最高裁判所の判決を受けて撤回された。最高裁はこの時、2010年制定の平等法における「性別」や「女性」という用語は生物学的性別で定義されると判断。単一性別の空間が「一貫して機能する」ためには、生物学的な性別の解釈が必要だとした。

イギリスの2010年平等法は、性別や人種、障害など九つの保護特性を差別から保護するもの。保護特性には性適合も含まれており、出生時の身体的性別と性自認が異なるトランスジェンダーの人々にも、差別からの保護を提供している。

NHSEの新ガイドラインも、トランスジェンダーの人々に対する差別を避けるため、医療機関はジェンダー中立の空間を提供すべきだと強調している。

ただし、そのためには個々のケースに応じた判断を下す必要があるかもしれないと指摘。さらに、臨床上のニーズを確実に満たすべきだとしている。

また、救急外来や緊急治療室など、臨床上のニーズが最優先となる状況があることも明示している。

NHSEは今回、患者向けのガイダンス文書に加え、医療機関が職員向けの更衣室、トイレ、その他の男女別施設をどのように整備するかについての助言も公表した。

こちらも、性自認ではなく、生物学的性別に基づいて使用されるべきだとしている。同時に、男女別の施設に代わる十分な選択肢、たとえば男女共用トイレや個室トイレなどを提供しているかを確認する監査を実施するよう促している。

病院に圧力をかけるのは、多くの病院がすでに男女別病棟の維持に苦慮しているからだ。

NHSEによると、単一性専用病棟に異なる性別の患者を入院させるという、以前の男女混合病棟に関するガイドライン違反の件数は、2021年以降、毎年増加している。

最新のデータによると、2026年8月の違反件数は5520件と、2025年6月の3853件から増加している。

生物学的な性別を重視する女性権利団体「セックス・マターズ」は、NHSEの新たなガイドラインを「現実への重大な回帰」として歓迎する一方で、その適用方法について懸念を表明している。

「NHSの患者データは混乱しており、数千人ものトランスジェンダーの人々が、(生物学的性別とは)反対の性別として記録されている可能性がある」と、同団体のマヤ・フォーステイター最高経営責任者(CEO)は述べた。

一方、トランスジェンダーの権利擁護団体「トランス・アクチュアル」や「トランス・プラス連帯連盟」は、トランスジェンダーの患者を安全にケアする方法について、NHSの職員らが混乱するのではないかと懸念している。

両団体は、「このガイドラインは、リソースが乏しい病院の現実の前では通用せず、実行不可能な運営上の課題を生み出すだろう」と指摘した。

NHSはかねて、平等法や職場規則の解釈をめぐって注目されるさまざまな議論の中心となっている。

イングランド北部ダラム郡のダーリントン記念病院は2026年1月、トランスジェンダー女性の同僚が女性更衣室を使用することに苦情を申し立てた看護師グループの尊厳を侵害したと認定された。この看護師たちは、異議を唱えるなら別の場所で着替えるよう言われたという。

裁判所は当時、同病院を運営するNHSトラストが、この看護師たちを間接的に差別したと結論付けた。

看護師たちは現在、訴訟費用を賄うため、NHSに40万ポンド(約8400万円)の支払いを求めている。

原告の一人で、現在はダーリントン看護師組合の代表を務めるベサニー・ハッチソン氏は、NHSEの「明確かつ必要なガイドライン」を歓迎しながらも、問題は各医療機関がそれに従うかどうかだとしている。

「ダーリントンの看護師たちは、プライバシー、尊厳、そして合法的な男女別施設を確保するために、雇用主を訴える必要など全くなかったはずだ」と、ハッチソン氏は述べた。

「(ガイドラインの実施を)看護師一人ひとりの勇気と自己犠牲に頼り続けることはできない」

スコットランドでも、トランスジェンダー女性の医師が女性用更衣室を使用することに反対した看護師をめぐる労働裁判が注目を浴びた。スコットランドの労働裁判所は2025年12月、男女別スペースに関する規則の解釈をめぐり、病院を運営するNHSファイフが看護師のサンディ・ペギー氏に嫌がらせを行っていたと認定した。ペギー氏は、この医師の更衣室利用に懸念を表明した後、停職処分を受けていた。

裁判所は一方で、ペギー氏が訴えたその他の差別や被害に関する主張を退けた。

この裁判は控訴手続きが進行中だ。