日本の火星衛星探査機「MMX」が打ち上げ成功、サンプル採取目指す

動画説明, 動画:火星の衛星フォボスへ向かう宇宙船が日本から打ち上げられた
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レベッカ・モレル記者、アリソン・フランシス記者、ケビン・チャーチ記者(BBCニュース・サイエンス)

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日午前、火星の衛星フォボスのサンプルを地球に持ち帰る計画で、鹿児島県の種子島宇宙センターから火星衛星探査機「MMX」を打ち上げた。

この計画が成功すれば、火星またはその衛星から採取されたサンプルが地球上の研究所で分析される初めての事例となる。

MMXは2027年8月にフォボスに到着する予定だ。

この計画では、火星の衛星がどのように形成されたのか、その謎が解明されることが期待されている。

MMX計画のサンプル分析担当副責任者を務める英自然史博物館のサラ・ラッセル教授は、「フォボスに行って地球にサンプルを持ち帰ることに成功したミッションはまだない」、 「これは非常に野心的で、かつ楽しい任務だと思う」と述べた。

MMX探査機が地球から火星の衛星フォボスへ向かう様子を示すインフォグラフィック。探査計画は4段階に分かれており、第1段階で探査機が地球を出発する。第2段階で探査機がフォボスの周回軌道に入り、探査車を着陸させる。第3段階では探査機が着陸し、衛星のサンプルを採取する。第4段階で探査機がサンプルを地球に持ち帰る。出典は宇宙航空研究開発機構

太陽系には衛星が3個しかない。地球の月と、火星の周りを回るフォボスとダイモスだ。

火星の衛星はどちらも非常に小さく、フォボスの直径は約20キロメートル、ダイモスは約10キロメートル。どちらも不規則な形をしており、宇宙のジャガイモのようだ。

MMX探査機は、火星の近くに到着後、まずはダイモスを調査し、その後フォボスに焦点を当てる予定だ。

MMXは小型ローバー(探査車)をフォボスに派遣して地形を探査する計画だが、これは容易ではないだろう。

ラッセル教授によると、これほど小さな衛星に探査車を着陸させた例はないという。

「フォボスそのものにはそれほど大きな重力はないが、重力がはるかに強い巨大な惑星の隣に位置しているため、探査車を地表に着陸させるのは非常に難しい」

オレンジ色の大きな火星と、二つの小さな岩のような衛星を描いたイメージ図。
画像説明, 火星の衛星は約45億年前に形成されたが、その形成過程は未だ解明されていない(イメージ図)

探査車は着陸地点を調べ、その後、MMX探査機本体がフォボスに着陸できるようにする。

衛星に到着した探査機は、ロボットアームと2組のサンプラーを展開し、フォボスのちりを採取する。

この物質は小型カプセルに詰め込まれ、2031年に地球に帰還し、南オーストラリア州のウーメラ砂漠に着陸する予定だ。

回収される物質の量は微量で、わずか10グラム。

日本の調査団と協力している英レスター大学のクリサ・アヴデリドゥ博士は、「本当にごくわずかな量しか採取されない」と、述べた。

「しかし、私たちは個々の粒子でさまざまな研究を行える。(中略)科学研究を行うために、地表から何キログラムものサンプルを採取する必要はない。1グラム1グラムに価値がある」

金と黒の探査機が宇宙空間で、岩の表面に着陸している。探査機は4本の三角形の脚と暗い色の太陽電池パネルを備えている。背景には火星の赤い円盤が見える
画像説明, フォボスに着陸したMMX探査機のイメージ図

科学者たちは、このサンプルによって、火星の衛星がどこから来たのかという謎が最終的に解明されるだろうと考えている。

この謎には、二つの相反する考え方がある。

一つは、火星の歴史の初期に宇宙岩が衝突し、その破片からフォボスとダイモスが形成されたとする説。

もう一つは、太陽系の外縁部から飛来した二つの小惑星が、火星の重力に捕らえられて衛星となったという説だ。

「サンプルが戻ってきたら、その化学組成や鉱物組成を詳細に調べることができる。そうすれば、仮説は全く異なる結果を示すだろう」とラッセル教授は述べた。

「フォボスが劇的な衝突の結果なのか、それとも捕獲された小惑星なのかは、すぐに明らかになるだろう」

研究チームは、この計画でさらなるボーナスがもたらされる可能性も期待している。

「非常に興味深いことに、フォボスは火星の表面に非常に近いため、火星の表面に何かが衝突すると、小さな粒子がフォボスに埋め込まれる可能性がある」とラッセル氏は述べた。

「つまり、採取したサンプルには火星の粒子が含まれている可能性がある。そうなれば、火星の組成や歴史について、非常に直接的な情報を得ることができる」

暗い中に石が展示され、スポットライトが当たっている
画像説明, イギリスの自然史博物館に展示されている火星隕石(いんせき)

火星の物質を地球に持ち帰ることは、宇宙科学者たちの長年の野望だ。

2021年から火星を探査している米航空宇宙局(NASA)の探査車「パーサヴィアランス」は、火星で慎重にサンプルを採取し、容器に保管している。

しかし、これらの容器を回収して地球に持ち帰る予定だったNASAと欧州宇宙機関(ESA)による「火星サンプルリターン計画」は、米連邦議会が資金提供の停止を決めたため、事実上中止となった。

一方、中国は独自の火星探査ミッションを計画しており、2028年に打ち上げを予定している。2031年にも、火星の物質を地球に持ち帰ることを試みる予定だ。

すでに地球上には、火星隕石(いんせき)という形で火星の破片がいくつか存在している。

これらは、小惑星の衝突によって火星の表面から吹き飛ばされ、最終的に地球に飛来した火星の破片だ。

火星隕石は極めてめずらしいが、地球に落下するすべての宇宙岩石と同様、到着するとすぐに大気、ちり、土壌、水と混ざり合い、汚染される。

科学者たちは、火星とその衛星から直接採取したサンプルを、手袋をはめて研究したいと切望している。なぜなら、それは汚染されていない純粋なサンプルだからだ。