EUがハンガリーの「変化の風」歓迎、164億ユーロの補助金凍結解除へ

ハンガリー国旗と欧州連合の旗が並ぶ、青い背景の前に、紺色のスーツ姿のマジャル氏が右手で敬礼するポーズで笑顔を浮かべ、隣で淡いピンクの上着を着たフォン・デア・ライエン委員長もほほえんでいる

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画像説明, ハンガリーのマジャル・ペーテル新首相(左)と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長。委員長は、マジャル氏が世界に「強いメッセージ」を送ったとたたえた(29日、ブリュッセル)
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ポール・カービー欧州デジタル編集長

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は29日、ブリュッセルでハンガリーのマジャル・ペーテル新首相と会談し、ハンガリーの新政権が「長らく待ち望まれていた改革」を推進することを条件に、約3兆円に上る欧州連合(EU)の補助金について、凍結を解除すると明らかにした。

フォン・デア・ライエン委員長は、ハンガリー政府に対する総額164億ユーロ(約3兆円)の補助金の凍結を解除すると発表した。マジャル首相は、この資金が低迷するハンガリー経済の活性化に役立つことを期待するとした。

マジャル首相はEUとの合意を「歴史的な突破口」と歓迎した。フォン・デア・ライエン委員長は、「ハンガリー全土で強い変化の風がすでに感じられる」と述べた。

ハンガリーでは4月12日の総選挙で、マジャル氏率いる中道右派の政党「ティサ(尊重と自由)」が、オルバン・ヴィクトル首相(当時)の与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」に圧勝。就任からまだ3週間足らずの新首相にとって、EUの支援は大きな後押しとなる。

EUはこれまで、オルバン政権の汚職疑惑や民主主義の後退を理由に、ハンガリーへの補助金を凍結していた。このため、結成2年のティサ党を率いて4月の総選挙に臨むにあたり、マジャル氏はこのEU資金の凍結解除を重要な政策目標に掲げていた。

フォン・デア・ライエン委員長は、マジャル首相と政権関係者たちがEUとの信頼関係を再構築したと称賛し、それが次の段階へ進むためへの自信につながったと話した。「私たちは近道をとらず、あらゆる問題に取り組んでいく」と、委員長は主張した。

資金の大部分となる100億ユーロは、マジャル首相のチームが8月の期限前に凍結解除を目指してきた、新型コロナウイルス復興基金からのもの。欧州委員会はこの資金について、腐敗防止や法治主義のための改革を含む重要な「マイルストーン」の実現を拠出条件としていた。

フォン・デア・ライエン委員長は、「ハンガリーがページをめくろうとしているという強いシグナル」がすでに出ていると述べた。

たとえばハンガリーは欧州検察庁に加盟し、公共調達に関する法律を改正し、いわゆる公益信託の改革に取り組んでいることなどを、委員長は挙げた。オルバン政権下では、病院や大学などの公的機関は、政府支持者が運営する信託に変更されていた。

EU加盟27カ国の経済・社会インフラ強化を目的としたEU結束基金からは、さらに64億ユーロの資金が提供されることになる。

マジャル新首相は、EUとの協議は数週間前に始まったばかりだが、すでに「ハンガリー国民にとって本当に、本当に重要な」合意に達することができたと話した。EUからの補助金は、ハンガリー国家予算総額の13%になるという。

しかし、わずか2日前の時点でさえ、合意が成立するかどうかは不透明だった。

マジャル首相はEUとの関係改善を優先してきたが、オルバン前首相は4月12日の選挙を前に、マジャル氏がEUとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の操り人形だと非難していた。

マジャル氏は、欧州委員会が凍結を解除した資金は、保健、運輸、教育の各分野に充てられると説明。15億ユーロはソーラーパネルと風力発電所を中心としたハンガリーの電力網の開発に充てられ、さらに20億ユーロは新しい都市間鉄道のために使われるという。

マジャル氏は、EUの資金が凍結された理由についてオルバン前首相は国民にうそをつき続けたと非難。本当の理由は「ハンガリーでは汚職が信じられないほどまん延していた」からだと述べた。

マジャル氏は、ハンガリーが腐敗防止や縁故主義について対策やルールを受け入れれば、EUの資金はハンガリーに流れ始めると自分は長年主張していたのだと言い、「(汚職対策の)措置導入と数週間の時間を経るだけで、非常に重要な資金に関する政治的合意を締結することができた」と述べた。

オルバン氏は先月、党の再建を誓って議員を辞職した。フィデス党党首としての今後は、6月の党大会で決定される予定だ。

ただし、オルバン氏の政権復帰の道は断たれたように見える。マジャル新首相のティザ党は20日、首相の任期を8年に制限する憲法改正案を議会に提出した。これが採択されれば、オルバン氏が首相に返り咲くことはできなくなる。

ティサ党は4月の総選挙で議会(定数199)の141議席を獲得。3分の2の過半数を得ているため、憲法改正に取り組むことができる。

他方、フォン・デア・ライエン委員長は、ハンガリーの学生が他のEU諸国とのエラスムス交換プログラムに再び参加できるようになることも明らかにした。

EUは2022年12月、ハンガリーの20以上の大学への資金提供を停止した。オルバン政権が、これらの大学を政府の統制下にある公益信託に変えたことが原因だった。