英政府、個人用防護具の調達で2兆円超を浪費 新型コロナ調査委が指摘

5人の医療従事者が救急外来の入り口に立っている。全員が青いプラスチック製のガウンを着て、マスクを着用している。うち1人の胸には「救急外来看護師」と書かれた札がかかっている。

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画像説明, パンデミックの中、個人用防護具(PPE)を着けた医療関係者ら
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新型コロナウイルスのパンデミックの時期、イギリスでは個人用防護具(PPE)の不足によって、国民保健サービス(NHS)職員と患者の命が危険にさらされる状況が発生し、政府はPPEの追加購入で税金約100億ポンド(約2兆1700億円)を無駄に費やした――。そう指摘する報告書を、独立調査委員会が14日に公表した。

調査委のヘザー・ハレット委員長は報告書で、結局使われなかったり期限が切れたりして廃棄せざるを得なかったPPEが大量に出たことで、調達の中で99億ポンドもの「膨大な」無駄遣いが生じたと批判した。この額は、政府がPPEに費やした総額149億ポンドの3分の2に当たる。

委員長はまた、1億5700万ポンド相当の医療器具も未使用のまま処分されたと指摘。さらに、短期間での呼吸装置の開発を業者に求めた「人工呼吸器チャレンジ」プログラムにおいては、生産に至らなかった設計に1億4300万ポンドが支払われたとした。

委員長によると、パンデミックが始まったとき、イギリスはマスク、ガウン、手袋の備蓄が危機的な状況だった。それらの確保に向けた世界的な競争への備えもできていなかった。

PPEの備蓄は最短15週間もつはずだったが、病院での需要が急増したため、2020年3月末には底をつき始めた。

イングランドでは、備蓄マスクのうち使用可能だったのは3分の1だけだった。スコットランドでは、病院で使用する高性能マスクの備蓄が全くなかった。

当時、介護施設や一般開業医院、薬局はすべて、独自にPPEを調達するよう求められた。報告書はこれを、「計画段階での重大な失敗」だと指摘した。

病院の救急室と思われる場所で、窓越しに隣の部屋をのぞいている医療従事者。スクラブの上に青いプラスチック製のエプロンを着用し、白いマスクをつけている。後ろには、防護服を着用した他のスタッフもいる

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画像説明, マスクなどを着けた医療関係者

報告書は、パンデミックにおいてはPPEの不足よりは買い過ぎのほうがましだとした一方で、「もっと需要に合わせて供給を調整されていれば、明らかに良かっただろう」と指摘した。

そして、「より良い計画があれば、より公平、迅速、低コストな調達決定ができたはずだ」と結論づけた。

また、当時の緊急時対応計画は「一度もストレステストを受けたことがなかった」ため、当局や閣僚らは「場当たり的な対応を迫られ、わずか数日のうちに新たな緊急調達・流通システムを構築した」とした。

当時の優先納入制度を誤りと断定

ハレット委員長は、PPE納入で政治的なコネのある業者を優先する、物議を醸した「VIPレーン」については、誤った政策であり、繰り返されてはならないとした。

2020年4月に導入されたこの制度は、医療器具の迅速な確保を目的に、閣僚、上下両院議員、高官らの推薦があるPPE納入の申請を、高い緊急性をもって扱うというものだった。

調査委はこの政策を「誤った優先順位付けの試み」だったとし、「緊急調達に不公平を組み込んだ」と批判した。

一方で、業者との最終契約に当たって、閣僚や当局者らによる「縁故主義や汚職があったことを示す証拠はまったくない」とした。

調査委は2025年2月、実業家ダグ・バロウマン氏とその妻ミシェル・モーン上院議員と関係のある企業「PPEメドプロ」に関して証言を集めた。同社が政府と結んだ総額2億ポンド超の契約をめぐっては、英国家犯罪庁(NCA)が刑事捜査を進めている。夫妻はいかなる不正行為も否定している。

これまでに48人が証言しており、これにはパンデミック期間の保守党政権で保健相だったマット・ハンコック氏や、閣僚経験者のマイケル・ゴーヴ氏も含まれていた。

ゴーヴ氏は今回の報告書の公表を受け、汚職疑惑は「根拠のないナンセンス」とソーシャルメディアのXに投稿。ただし、「悪意のない誤り」については全責任を負うと述べた。

PPE関連制度の見直しを提言

報告書では、以下の提言も記された。

次のパンデミックに備え、PPEの購入と配布に関する緊急システムを「抜本的に見直す」

主要な保健機器を国家戦略資産として扱う「国内産業戦略」を策定する

マージーサイドの巨大倉庫に保管されているパンデミック備蓄物資の状態を改善する

英首相官邸の報道官は、今回の報告書の内容は厳しいものだとし、次のようにコメントした。

「パンデミックは社会全体に深刻かつ長期的な影響を及ぼした。現政府は、将来に備え、国民を守るため、新型コロナウイルスに関する調査から得られた教訓を真摯(しんし)に受け止める」