【2026年サッカー男子W杯】 FIFA、アルゼンチン代表の横断幕について「報告書を精査中」 フォークランド諸島領有権を主張

アルゼンチンの選手たちが、白い布に「Las Malvinas son Argentinas」と黒く書かれた幕を手に喜んでいる。青いジャージを着ている選手たちと、脱いでいる選手がいる

画像提供, Getty Images

画像説明, アルゼンチンの選手たちはイングランドに勝利した後、「マルビナス(フォークランド諸島)はアルゼンチンのものだ」と書かれた横断幕をピッチで掲げた(15日、米アトランタ)。FIFAは過去にも、同じ行為について、アルゼンチン・サッカー協会に罰金を科している
Published
この記事は約 6 分で読めます

アダム・ミリントンBBCスポーツ記者

サッカー男子ワールドカップ(W杯)北中米大会の準決勝で、2-1でイングランドに勝利したアルゼンチンの選手たちが、試合後にピッチで、フォークランド諸島に対する自国の領有権を主張する横断幕を掲げたことをめぐり、国際サッカー連盟(FIFA)は16日、「試合報告書を精査中」だと明らかにした。アルゼンチンへの処分は精査を経て判断が下されることになる。

前大会優勝のアルゼンチンは15日(日本時間16日)、アメリカのアトランタ・スタジアムでの準決勝で、後半に入ってイングランドに先制点を許したものの、終盤に2得点を挙げて劇的な逆転勝利を収めた。19日(同20日)の決勝戦で、スペインと対戦する。

イングランドとの試合では、終了のホイッスルが鳴ると、アルゼンチンの選手たちは「Las Malvinas son Argentinas」(マルビナスはアルゼンチンのものだ)と書かれた横断幕を掲げて勝利を祝った。「マルビナス」はフォークランド諸島の、アルゼンチンでの名称。

南西大西洋のフォークランド諸島はイギリスの海外領土だが、イギリスとアルゼンチンの間で主権をめぐる紛争が続いている。

FIFAの広報担当者は声明で、「通常の手続きに従い、FIFAの独立した懲戒委員会が現在、試合報告を精査し、関連する状況を考慮している。今後、FIFAの懲戒規定に基づいて、取り得る対応を決定する」と説明した。

FIFAは2014年、スロヴェニアとの親善試合前にアルゼンチンの選手たちが同じメッセージの横断幕を掲げたとして、アルゼンチン・サッカー協会に2万ポンドの罰金を科した。 FIFAは当時、この行為は政治活動およびチームの不正行為に関する規則に違反していると述べた。

フォークランド諸島についての横断幕をめぐっては、FIFAに調査を求める声が上がり、イギリスの首相官邸がこれに賛同していた。英首相官邸の報道官は、「W杯は我々のものではないかもしれないが、フォークランド諸島は間違いなく我々のものだ。フォークランド諸島に対する我々のコミットメントは決して揺らがない」と述べた。

一方、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、選手たちの行動は「理解できる」「妥当な」ものだと述べたと、報じられている。

ただ、ミレイ氏はラジオ局エル・オブセルバドルに対し、「ピッチ上で起きることは外交の一部ではない」とも明確に述べた。

「確かに、マルビナスはアルゼンチンのものだ。我々はそれを取り戻す。外交の場で、賢明に行動することによって、それを実現する」

フォークランド諸島は1833年以降、イギリスの統治下にある。一方で、アルゼンチンは、歴史的に同諸島はスペイン王室から継承したものであり、また南米大陸に近接していることを理由に、同諸島に対する権利があると主張してきた。同諸島はアルゼンチン本土の東、約483キロの位置にあり、同国の公用語であるスペイン語ではマルビナス諸島と呼ばれる。

1982年には、フォークランド諸島をめぐってイギリスとアルゼンチンが10週間にわたり軍事衝突した。当時アルゼンチンの軍事独裁者だったレオポルド・ガルチェリ将軍が、同諸島への侵攻を自国軍に命じたことがきっかけだった。

これに対し、当時のマーガレット・サッチャー英政権は、諸島を奪還するため海軍の任務部隊を派遣した。

アルゼンチンは最終的に降伏したが、同国は現在もフォークランド諸島の主権を主張している。

この紛争では、アルゼンチン軍の649人、イギリス軍の255人が死亡したほか、フォークランド諸島の住民3人が命を奪われた。

その後、フォークランド諸島の住民は圧倒的多数が、イギリス領として残る意向を示してきた。

2013年に実施された住民投票では、有権者1672人のうち3人を除いて全員がイギリス海外領土としての継続に賛成した。投票率は90%を超えた。

どんな処分の可能性が?

FIFAは通常、大会終了後の数週間で、選手や各国のサポーターによる一般的な規則違反に対して懲戒処分を決定する。ただし今回は、W杯で起きた事案であることから、より厳しく扱われる可能性がある。

アルゼンチンが決勝に出場する資格を失う見込みはない。

英野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は、横断幕を掲げたアルゼンチン選手たちについて、19日のスペインとの決勝戦に出場させるべきではないと訴えている。

デイヴィー氏は、欧州サッカー連盟(UEFA)が、2024年の欧州選手権(ユーロ)の優勝祝賀会で「ジブラルタルはスペインのものだ」と声を上げたスペイン代表のアルバロ・モラタ選手とロドリゴ・エルナンデス・カスカンテ選手を、1試合の出場停止処分にした例に言及した。

ジブラルタルはスペイン南端に位置し、18世紀以降イギリスの統治下にある。スペインは長年、返還を求めている。

同様の政治的メッセージを掲げた選手に対し、FIFAが出場停止処分を決めた例は過去にもある。

2012年ロンドン五輪の男子サッカー3位決定戦後、当時の韓国代表MF朴鍾佑選手は「独島は我々の領土」と韓国語で書かれたメッセージを掲げた。

韓国が独島、日本が竹島と呼称する島嶼(とうしょ)群は、日韓双方が領有権を主張し、韓国が実効支配している。

朴選手は数カ月後に2試合の出場停止処分を受け、W杯予選2試合を欠場することとなった。

横断幕をめぐる反応

フォークランド諸島政府は、今回の横断幕について「失望している」と表明し、FIFAが「(同組織の)規則に従い、この種のあらゆる行為に制裁を科す」ことを期待しているとした。

また、「スポーツに政治が持ち込まれることは望まない」とした。

アルゼンチンの放送局TNによると、ミレイ大統領は、「選手たちが自らの考えを表明することを望み、実際にそうすることは完全に妥当かつ正しいこと」だと述べたという。

しかし、これが「誤った解釈」につながるべきではないとも述べ、「これはサッカーの試合であり、チームの監督や(1982年のフォークランド紛争で従軍した)退役軍人たちも、そのように理解している」とした。

イギリスのピーター・カイル通商相は、政治をワールドカップと切り離した状態を保つことが「不可欠」だとして、FIFAに調査の実施を求めた。

カイル氏は、「私は代表チームのことを、彼らが成し遂げたことを、彼らが示したプロ意識と品位を、本当に誇りに思う」と述べた。

そのうえで、「それは、我々が昨夜(15日夜)に見たアルゼンチン代表の様子とはまったく対照的だった。彼ら(アルゼンチン)の行動に対する結果については、今やFIFAが対応すべきことだ。FIFAがこの件について、適切な調査を行うことを心から願っている」とした。

英最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首も、カイル氏の見解に同調するかたちで、FIFAは「絶対に調査を行うべきだ」と述べた。