イランがアメリカの水道システムをハッキング? 少なくとも7州で

蛇口から水が流れている様子

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アナ・フェイギー記者

アメリカのミネソタ州が今年7月下旬、州内の30以上の水道システムが「組織的なサイバー攻撃」を受けたと報告した際、これに大勢が驚いた。

米連邦捜査局(FBI)はその数日後、少なくとも7州でサイバー攻撃が報告されており、「その活動の一部は水道事業を劣化させた」と警告した。

その後、ニュージャージー州、サウスダコタ州、ジョージア州の各当局も同様に攻撃されたと発表した。この3州が、FBIの言う攻撃を受けた7州に含まれているかどうかは不明。

米メディアによると、米サイバーセキュリティー・インフラストラクチャーセキュリティー庁(CISA)は、イランとの関連性の可能性について調べているという。CISAはコメントを控えた。

ドナルド・トランプ米大統領は、これについてイランを非難していない。しかし、サイバー技術の専門家たちはBBCに対し、今回の攻撃はイラン政府の指示による可能性が高いと話した。

かつて米国務省のテロ対策顧問だったモーガン・ライト氏は、影響を受ける州の数は今後増えると予想しており、「どの州も被害を受ける可能性がある」と述べた。

アメリカの上水道事業には15万2000の水道事業者があり、1万6000以上の下水処理施設がある。

要点を説明する。

イランが攻撃の背後にいるのか?

水道について今回報告されたような攻撃は通常、北朝鮮やイランによるものとされることが多いと、ライト氏はBBCに話した。

「我々が今、戦っている相手は? それはイランだ。そのため、このような攻撃を仕掛ける能力があり、かつこのような攻撃をしようとするだろう国の、第一番の候補にイランが躍り出たというわけだ」

BBCがアメリカで提携するCBSによると、捜査当局は、アメリカとイランの戦争が続くなか、ハッカーたちが自分たちの居場所をイランだと偽装し、混乱を悪化させようとしている可能性もあるとみて調べている。

かつてホワイトハウスの国家サイバー担当副局長代行だったジェイク・ブラウン氏はBBCに対し、トランプ政権も独自の情報戦を展開しているだけに、たとえイランがアメリカの水道インフラに侵入したと確認されても、トランプ政権がそれを認める可能性は低いと話した。

7月31日の閣議で、共和党を率いるトランプ大統領は、水道ハッキング事件について、民主党のティム・ウォルズ州知事を含む「極めて無能な」ミネソタ州当局者を非難した。

対するウォルズ知事は、「トランプ氏は今回の攻撃の責任者がいったい誰なのか、本当のところを承知しているし、他の州も被害を受けたことを知っている」と反論した。

イランはアメリカの水道攻撃についてまだコメントしていない。しかし、イラン政府はこれまで、水道システム、大統領選挙、病院、そして2014年のラスベガスのカジノ企業に対するサイバー攻撃など、さまざまなサイバー攻撃への関与を繰り返し否定してきた。

2016年にニューヨーク市郊外の銀行やダムがサイバー攻撃を受けた事件で、イランの関与が疑われた際、イラン外務省の報道官は、アメリカはそのような疑惑を立証すべきだと述べた。

イランのホセイン・ジャベリ・アンサリ報道官は国営テレビで当時、「イランはサイバー空間で危険な行為を実施しようとしたことはなく、そのような行為を支持しない」と述べた。

典型的なイランの動きなのか

専門家らはBBCに対し、イランによるこうしたサイバー活動は、記録に残っていると説明した。イラン国外にいるイラン支持勢力が関与している可能性もあるという。

「攻撃や攻撃グループがすべてイラン発なら、ほぼ確実にイランと結びつけることができる」ものの、攻撃がイラン国外からだと「犯人を特定するのが難しく」なり、悪意ある実行犯は言い逃れできるようになると、ライト氏は言う。

「指紋が直接残らないよう、そういうやり方をする」のだと、ライト氏は話した。

BBCヴェリファイ(検証チーム)の取材によると、イランが今年、アメリカとイスラエルに対して行ったサイバー攻撃のほとんどは、「ハンダラ」と呼ばれるグループによるものだった。

米司法省は今年3月、このグループはイランと関わりがあり、イラン・イスラム共和国情報治安省(MOIS)のために活動していると発表した。

2月末に米・イスラエルがイランを攻撃して戦争が始まって間もなく、FBIは3月末に、カシュ・パテルFBI長官の個人メールアカウントがイランと関係のある「ハンダラ・ハック・チーム」というグループにハッキングされたと認めた。

BBCヴェリファイの取材によると、ハンダラが最も最近、アメリカでサイバー攻撃の犯行声明を出したのは、6月中旬だった。ハッカーたちは、米軍がイランの水道インフラを攻撃したことへの報復として、カリフォルニア州の水道施設に侵入したと主張していた。

過去にも、複数のハッキング事件がイランとかかわりがあるとされてきた。

2026年:司法省は3月、医療技術企業に対するハンダラのハッキング作戦を阻止したと発表した。同省によるとハンダラは、イスラエル政府および軍関係者に関する機密情報を自分たちのサイトに掲載したという。

2024年:司法省は9月、イランが「不和をあおり、アメリカの選挙プロセスへの信頼を損ない、イランを支援するため」、アメリカ政府や選挙運動関係者などを対象にハッキングを行い、当局者に関する情報を違法に入手したと非難した。

2023年:CISAは2024年12月、2023年と2024年にわたりアメリカの上下水道システムが、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)と関係があるとされるグループによってハッキングされたと発表した。この攻撃のため、ペンシルヴェニア州の二つの町で、水圧調整装置が一時的に停止される事態になったという。

2020年:司法省は11月、イラン国籍の2人を、アメリカの有権者の機密情報を入手し、トランプ氏に投票するよう脅すメッセージを送信することで大統領選挙に干渉しようとした罪で起訴した。

2017年:イランを拠点とするハッカー集団が、アメリカの地方自治体、学校、医療機関、金融機関を標的としたランサムウェア攻撃を数年にわたり続けた疑いが指摘された。ただしCISAは、このグループの活動はイラン政府によって「おそらく承認されていない」と指摘した。

水供給への危険は

専門家らはBBCに対し、今回のハッキングによる最大の脅威は水道水の供給そのものへの脅威ではなく、水道水の安全性に対する国民の信頼を損なうことだと述べた。

「戦争をめぐりアメリカ国内が深く分裂しているタイミングで、政府は基本的な公共サービスを提供できるという我々の信頼を攻撃している」のだと、ブラウン氏は述べた。

専門家らは、イランのハッカーがいつかアメリカの水道水供給を危険にさらす可能性も否定できないと付け加えた。

ライト氏によると、悪意ある行為は、有害な化学物質の拡散、断水、または機器の損傷を引き起こす可能性があるという。

CISAと米環境保護庁は共同で、サイバー攻撃は水道事業者にとって「深刻な懸念」だと述べた。

「一つの国を屈服させたいなら、二つのものを狙えばいい。電力と水だ」とライト氏は言った。

防止策は

ライト氏によると、水道と下水処理に使われる多くの機器は、インフラが古いか、技術が古いかのいずれかの理由で、攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)な状態にある。

BBCの取材に応じた専門家たちは、こうした水道施設のセキュリティーを強化しなければ、アメリカは今後もこの国家安全保障上の脅威に直面し続けるだろうと警告した。

アメリカの水道事業の大部分は、他のほとんどの重要インフラとは異なり、公営だ。このため、政府が何らかの対策を講じる必要があるのだと専門家たちは言う。

CISAは、この脅威を最小限に抑えるため、アメリカ国内の各政府機関に対し、さまざまな改修を推奨している。

ハッキングの動き即座に阻止するため、CISAは水道システムをできるだけ速やかにインターネットから切り離し、パスワードをリセットすることを推奨した。

(追加取材:シャヤン・サルダリザデBBCヴェリファイ記者)