ハンタウイルス集団感染のクルーズ船、停泊地カーボヴェルデを出発 感染疑いの3人は下船

画像提供, Reuters
大西洋を航行中に、ネズミなどがもつハンタウイルスによると疑われる集団感染が発生したクルーズ船が6日、停泊地のアフリカ・カーボヴェルデを出港した。ハンタウイルスへの感染が疑われる重症者2人と、容体が安定している1人は、出港前に船を降りた。
クルーズ船「ホンディウス」の運航会社オーシャンワイド・エクスペディションズによると、重症の2人は治療を受けるためにオランダに到着したという。
容体が安定している3人目については、搬送便に搭乗したものの、運行に遅れが生じているとした。
下船した3人はイギリス人、オランダ人、ドイツ人だという。このドイツ人は、2日に船内で死亡したドイツ人女性と「密接な関係」にあると、運航会社は説明した。
カーボヴェルデ沖に3日間停泊したホンディウスは現在、スペイン領カナリア諸島へ向かっている。
ホンディウスは、約1カ月前に南米アルゼンチンを出港し、アフリカ・カーボヴェルデへ向かっていた。
ハンタウイルス感染症は通常、感染したげっ歯類の排泄(はいせつ)物との接触など、環境暴露が原因となるが、まれに人から人へ感染する。重い呼吸器疾患を引き起こすことがある。
今回のホンディウスでの集団感染では、これまでに乗客3人が死亡している。
アメリカでは経過観察、スイスに帰国した男性が陽性
こうした中、アメリカの2州の当局は、先に下船してアメリカに帰国した3人について、経過観察中だと、BBCに語った。現時点では、3人とも感染が疑われる症状はみられていないという。
ジョージア州の公衆衛生当局は、経過観察中の住民2人の健康状態は良好で、感染を示すものはないとしている。
アリゾナ州の保健当局は、住民1人を経過観察しており、症状は出ていないと説明した。
世界保健機関(WHO)は、ホンディウスを降りてスイスへ戻った男性1人がハンタウイルス陽性と判明し、チューリヒの病院で治療を受けていることを明らかにした。
「この患者は、健康に関する事態を乗客に通知する船の運航会社からの電子メールに反応していた」と、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は声明で述べた。
乗客について分かっていること
オーシャンワイド・エクスペディションズによると、23カ国からの計146人が、現在も「厳格な予防措置」の下でホンディウス内にとどまっている。
WHOの最新報告では、この船の乗客だった人の中で、ハンタウイルスへの感染が3件、感染疑いが5件確認されている。
南アフリカの保健当局は、同国の国立感染症研究所が検査を行った結果、ホンディウスの出発地であるラテンアメリカで多くみられるハンタウイルスのアンデス株が、感染が確認された患者のうち2人から検出されたと発表した。
アンデス株は、過去のアウトブレイク(大流行)で人から人への感染が確認されている。南アフリカは、接触者の追跡調査を継続中だとしている。
当局によると、クルーズ船で死亡した3人のうち1人から、アンデス株が検出された。ほかの2人については調査が進められている。
死亡した乗客には、先月24日にセントヘレナ島で下船したオランダ人女性1人が含まれる。女性の夫は先月11日に船内で死亡したが、感染は確認されていない。
オランダ人女性はその後、南アフリカへ搬送されたが、先月26日に死亡した。WHOのマリア・ヴァン・ケルコフ博士は、女性が搭乗した便の接触者の追跡を行っていると、BBCに語った。
KLMオランダ航空は6日、女性が4月25日にヨハネスブルク発アムステルダム行きの便に一時乗り込んだが、体調を理由に乗務員が搭乗を認めなかったと発表した。
死亡した3人目のドイツ人女性も、感染が確認されていない。女性の遺体は今も船内にある。
6日に医療搬送された乗客3人は、いずれも現時点でハンタウイルス陽性とは診断されていない。ただ、2人には感染が疑われる症状が出ているという。
こうした中、英健康安全庁(HSA)は、船内でハンタウイルスにさらされた可能性があるとして、イギリス人2人が国内で自宅隔離されていると発表した。2人はクルーズ旅行の早い段階で下船していて、症状は出ていないという。
オーシャンワイド・エクスペディションズが5日に公表したデータでは、英国籍の乗客が19人、乗員が4人いることが示されている。
このうち1人は、6日に下船したイギリス人男性(56)で、「容体は安定」しているという。スペインの保健相は先に、この男性は当該船の医師だと説明したが、これは事実ではないとみられる。
複数のメディアはこの男性を元警官のマーティン・アンスティー氏と報じている。BBCはこれについて独自に検証できていない。
ハンタウイルスは通常、感染したげっ歯類から感染するが、今回のケースでは、濃厚接触により人から人へ感染した可能性があると、複数の医療専門家は見ている。
カナリア諸島は入港に反発
カーボヴェルデ沖に停泊していたクルーズ船は6日、スペイン領カナリア諸島へ向かった。
スペイン当局は船の移動に同意したものの、これに反対するカナリア諸島自治州政府のフェルナンド・クラビホ首相は、スペイン首相との緊急協議を要請した。
「(クルーズ船の)カナリア諸島への入港を許可することはできない」と、クラビホ氏はスペインのラジオ局オンダ・セロに語った。「これは技術的な基準に基づく決定ではなく、我々に十分な情報が提供されているわけでもない」。
スペインのモニカ・ガルシア保健相は、クルーズ船がカナリヤ諸島のテネリフェ島に到着後、乗客全員が医療検査を受けることになると説明。また、移動に支障がないと判断された外国人については、居住する国に帰ることになるだろうとした。
スペイン人の乗客については、マドリードの軍事病院に移送・隔離する方針だとした。
クルーズ船の乗客が下船する際は、カナリア諸島の住民との「接触を回避」するため、住民への「リスクはない」とも、ガルシア氏は述べた。クルーズ船は数日中にテネリフェ島に到着する。
前出のWHOのケルコフ博士は、ハンタウイルスの感染経路は「新型コロナウイルスやインフルエンザとは大きく異なる」と説明。
「互いにかなり離れた状態での軽い接触ではなく」、「直接的な身体接触」によるものだと述べた。







