バンクシー、ロンドン中心部の新作彫像は自分の作品だと認める

スーツを着た男性が大きな旗を持ちながら片足を台座から踏み外して歩いているが、その旗に顔が覆われている様子を描いた灰色の像。

画像提供, Getty Images

画像説明, この像が4月29日、ロンドン中心部ウォータールー・プレイスの台座に登場した
この記事は約 7 分で読めます

オーレリア・フォスター(ロンドン)

世界的な覆面芸術家バンクシーは4月30日、ロンドン中心部に前日、突如として登場した大きい像が自分の作品だと認めた。バンクシーのサインが台座に刻まれたこの像は、スーツ姿の男が大きな旗を掲げている姿のもので、手に持った旗で顔が完全に覆い隠され、前へ歩こうとして台座を踏み外している様子が描かれている。

像がいきなり設置されたセント・ジェイムズ地区のウォータールー・プレイスは、帝国主義や軍事的優位を称えるために1800年代に設計された。バンクシーは今回の像を、国王エドワード7世やフローレンス・ナイチンゲール、クリミア戦争記念碑などの像の近くに置いた。

バンクシーの代理人はBBCに対し、像が設置されたのは29日早朝のことだと明らかにした。その後、バンクシー本人が30日午後、自分のインスタグラムの自分のアカウントに動画を投稿した。

ロンドン中心部の空撮写真。新しい像の位置が強調表示されるとともに、セント・ジェイムズ公園、トラファルガー広場、ピカデリー・サーカスの位置も示してある

像は、式典などに使われる道路の分離帯に置かれた。なぜここに置いたのかについて、バンクシーは「少し隙間が空いていたから」と説明している。

29日に登場して以来、見物人の数は徐々に増え続けている。

学生のオリー・アイザック氏(23)は、数十人の見物人に混じって像を眺めながら、「バンクシーの場合、パブリックアートなのでいつまで展示されているかわからない。期間限定のイベントのようなものだ」と話した。

像について「素晴らしいと思う」とアイザック氏は言い、「世界中、そしてこの国で再燃しているナショナリズムへの反応」だと思うと話した。

「あのスーツ姿は、いかにも政治家そのものだ」

歴史的な白い石造りの建物が並ぶロンドン中心部の路上に黒い像が立っている。周りを大勢が囲み、写真を撮っている。青空の下、灰色の石の台座の上の像は、灰色のスーツ姿の男性が大きな旗を掲げて、台座から左足を外して正面に向かって歩いてくるが、顔は旗で覆われているというもの

画像提供, PA Media

画像説明, 像の写真に大勢が集まり次々と写真を撮った(30日、ロンドン)
灰色の石の下部に「BANKSY」と手書きで刻まれている
画像説明, 台座に刻まれたバンクシーの署名

教師のリネット・クロラリー氏(55)は、友人が像についてインスタグラムに投稿したのを見て、実際に見に来ることにしたのだと話した。

「いいと思う。場所もいい。どうやってここに運ばれたのかも気になる」

30日の午後には、作品の周囲に安全柵が設置された。

蛍光ベストとヘルメット姿の作業員たちが、像の周りに灰色と緑、紅白の安全策を設置している

画像提供, PA Media

画像説明, 像の周りに安全柵が設置された(30日)

この地域の行政を管轄するウェストミンスター・シティ・カウンシルは、「ウェストミンスターにバンクシーの最新の彫像が登場し、活気あふれる街のパブリックアートシーンに見事に加わったことを嬉しく思う。像を保護するための初期段階の措置は講じているものの、現時点では、一般市民が自由に鑑賞し、楽しめる状態を維持する予定」だと述べた。

修繕工事中の伝統的な建物に、長いやりを右手に持った金色の女神像が立っている。その前に右手に大きな旗を持つバンクシーの像が台座を踏み外す勢いで前に左足を出している
画像説明, 長年の歴史を持つ会員制社交クラブ「アシーニアム・クラブ」の建物の前に、バンクシーの像は置かれた。修繕中の建物の前面には金色の女神アテナの像が置かれている

BBCのポッドキャストシリーズ「バンクシー・ストーリー」を作ったジェイムズ・ピーク氏は今回の像について、「胸を張って威張り散らす権力者が、旗によって完全に視界を遮られ、そのために台座から足を踏み外そうとしているという、見事な批評が表現されている」と指摘。「一瞬が、完全に切り取られている。一般的な彫像では実際見られないものだ」とも述べた。

バンクシーが「またしても見事なクーデターを成し遂げた(中略)ここに置いたという配置の妙が、圧倒的だ」ともピーク氏は評した。

「いったいどうやって、こんなことができたのか分からない。これほど警備の厳しい場所に、どうやって荷台の低いトラックを乗り入れて、巨大な樹脂製の像を設置できたのか」

設置場所についてピーク氏は、「イギリスには、征服を繰り返した帝国主義的な過去がある。そのことを、私たちは直視しないとならない。バンクシーが心底忌み嫌う過激なナショナリズムも、その一部だ」と話し、「(バンクシーの)作品は、その一つ一つが社会運動だ」とも述べた。

ウォータールー・プレイスの中央には、石の台座に載った騎馬像が立ち、幅広い通りの両側には壮麗な歴史的建造物が立ち並んでいる。
画像説明, バンクシーが今回像を設置したウォータールー・プレイスの、2020年の写真

インスタグラムではバンクシーの投稿に対し、「皆が忘れた頃に現れて、誰にも気づかれずにフルパワーで到着するのが大好きだ」というコメントが書き込まれた。別のユーザーは「長年のバンクシー・コレクターとして、今回の作品は本当に響く。巨大なモニュメントのようなエネルギーがありつつ、その意図は残酷なほどシンプルだ。自分の旗のせいで何も見えなくなったスーツ姿の男。まさにバンクシーだ。最初は静かだが、一度見たら忘れられない」と書いた。

この像の意味については、「盲目的な愛国心」への批評だと多くの人が解釈している。

本名が公式には明かされていないバンクシーが、ロンドンに彫像を設置したのは今回が初めてではない。2004年には、ロダンの「考える人」を風刺した「酒飲み」がシャフツベリー・アヴェニューに設置されたが、その直後に盗まれている。

バンクシーはかねて世界中で注目を集め、しばしば物議を醸してきた。最近ではロンドンを拠点とした作品を相次ぎ発表している。

昨年12月には、ロンドン西部ベイズウォーターで地面に横たわる2人の子供の壁画が現れた。昨年9月には、王立裁判所の建物に絵が描かれた。裁判官が小槌(こづち)を振り下ろし、抗議者が血の付いたプラカードを持って地面に倒れる様子の絵だった。

2024年8月には市内各地に、ヤギ、ゾウ、ゴリラ、サル、ピラニア、サイ、ペリカンなど動物の絵を次々と連作した。

どの作品も密かに設置された様子で、設置後に本人が自分のインスタグラム・アカウントで、自作だと認めるという流れになっている。

私有地か公共の場所かを問わず設置されるその作品は、政治的なメッセージとして広く解釈される。出現後すぐに撤去されることも少なくない。