バンクシー、ロンドン中心部の新作彫像は自分の作品だと認める

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オーレリア・フォスター(ロンドン)
世界的な覆面芸術家バンクシーは4月30日、ロンドン中心部に前日、突如として登場した大きい像が自分の作品だと認めた。バンクシーのサインが台座に刻まれたこの像は、スーツ姿の男が大きな旗を掲げている姿のもので、手に持った旗で顔が完全に覆い隠され、前へ歩こうとして台座を踏み外している様子が描かれている。
像がいきなり設置されたセント・ジェイムズ地区のウォータールー・プレイスは、帝国主義や軍事的優位を称えるために1800年代に設計された。バンクシーは今回の像を、国王エドワード7世やフローレンス・ナイチンゲール、クリミア戦争記念碑などの像の近くに置いた。
バンクシーの代理人はBBCに対し、像が設置されたのは29日早朝のことだと明らかにした。その後、バンクシー本人が30日午後、自分のインスタグラムの自分のアカウントに動画を投稿した。

像は、式典などに使われる道路の分離帯に置かれた。なぜここに置いたのかについて、バンクシーは「少し隙間が空いていたから」と説明している。
29日に登場して以来、見物人の数は徐々に増え続けている。
学生のオリー・アイザック氏(23)は、数十人の見物人に混じって像を眺めながら、「バンクシーの場合、パブリックアートなのでいつまで展示されているかわからない。期間限定のイベントのようなものだ」と話した。
像について「素晴らしいと思う」とアイザック氏は言い、「世界中、そしてこの国で再燃しているナショナリズムへの反応」だと思うと話した。
「あのスーツ姿は、いかにも政治家そのものだ」

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教師のリネット・クロラリー氏(55)は、友人が像についてインスタグラムに投稿したのを見て、実際に見に来ることにしたのだと話した。
「いいと思う。場所もいい。どうやってここに運ばれたのかも気になる」
30日の午後には、作品の周囲に安全柵が設置された。

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この地域の行政を管轄するウェストミンスター・シティ・カウンシルは、「ウェストミンスターにバンクシーの最新の彫像が登場し、活気あふれる街のパブリックアートシーンに見事に加わったことを嬉しく思う。像を保護するための初期段階の措置は講じているものの、現時点では、一般市民が自由に鑑賞し、楽しめる状態を維持する予定」だと述べた。

BBCのポッドキャストシリーズ「バンクシー・ストーリー」を作ったジェイムズ・ピーク氏は今回の像について、「胸を張って威張り散らす権力者が、旗によって完全に視界を遮られ、そのために台座から足を踏み外そうとしているという、見事な批評が表現されている」と指摘。「一瞬が、完全に切り取られている。一般的な彫像では実際見られないものだ」とも述べた。
バンクシーが「またしても見事なクーデターを成し遂げた(中略)ここに置いたという配置の妙が、圧倒的だ」ともピーク氏は評した。
「いったいどうやって、こんなことができたのか分からない。これほど警備の厳しい場所に、どうやって荷台の低いトラックを乗り入れて、巨大な樹脂製の像を設置できたのか」
設置場所についてピーク氏は、「イギリスには、征服を繰り返した帝国主義的な過去がある。そのことを、私たちは直視しないとならない。バンクシーが心底忌み嫌う過激なナショナリズムも、その一部だ」と話し、「(バンクシーの)作品は、その一つ一つが社会運動だ」とも述べた。

インスタグラムではバンクシーの投稿に対し、「皆が忘れた頃に現れて、誰にも気づかれずにフルパワーで到着するのが大好きだ」というコメントが書き込まれた。別のユーザーは「長年のバンクシー・コレクターとして、今回の作品は本当に響く。巨大なモニュメントのようなエネルギーがありつつ、その意図は残酷なほどシンプルだ。自分の旗のせいで何も見えなくなったスーツ姿の男。まさにバンクシーだ。最初は静かだが、一度見たら忘れられない」と書いた。
この像の意味については、「盲目的な愛国心」への批評だと多くの人が解釈している。
本名が公式には明かされていないバンクシーが、ロンドンに彫像を設置したのは今回が初めてではない。2004年には、ロダンの「考える人」を風刺した「酒飲み」がシャフツベリー・アヴェニューに設置されたが、その直後に盗まれている。
バンクシーはかねて世界中で注目を集め、しばしば物議を醸してきた。最近ではロンドンを拠点とした作品を相次ぎ発表している。
昨年12月には、ロンドン西部ベイズウォーターで地面に横たわる2人の子供の壁画が現れた。昨年9月には、王立裁判所の建物に絵が描かれた。裁判官が小槌(こづち)を振り下ろし、抗議者が血の付いたプラカードを持って地面に倒れる様子の絵だった。
2024年8月には市内各地に、ヤギ、ゾウ、ゴリラ、サル、ピラニア、サイ、ペリカンなど動物の絵を次々と連作した。
どの作品も密かに設置された様子で、設置後に本人が自分のインスタグラム・アカウントで、自作だと認めるという流れになっている。
私有地か公共の場所かを問わず設置されるその作品は、政治的なメッセージとして広く解釈される。出現後すぐに撤去されることも少なくない。











