牛乳や卵などの価格を引き下げるよう英政府が圧力、スーパー側は「上限」設定には反発

スーパーマーケットのレジ前に設置された黒いベルトコンベアの上に、牛乳が入ったボトルや卵、食パンなどが並んでいる

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物価が高騰する中、消費者の負担を軽減しようと、イギリスの閣僚らがスーパーマーケット側に販売価格の引き下げを迫っている。ただ、卵やパン、牛乳といった基礎食品などの価格に上限を設定するよう強制することまでは踏み込まないとしている。

イギリスの複数のスーパーマーケットの関係者はBBCに対し、政府から、規制緩和と引き換えに、主要な食料品の価格を自主的に据え置くよう求めてきたと明らかにした。

ダン・トムリンソン財務政務次官は20日、小売業界との間で、「生活費に苦しむ人々を支援するために、業界側ができることについて」協議が行われたことを認めた。

トムリンソン氏は、商品価格に上限を設定するよう、スーパーマーケット側に強制する方針はないとしている。しかし、英小売り大手「マークス・アンド・スペンサー(M&S)」のスチュアート・マシン最高経営責任者(CEO)は、自主的な取り組みであっても「まったくばかげている」と指摘する。

BBCの取材では、財務省が19日に小売業者に対し、特定の商品の価格を据え置くなら、商品パッケージに関する規制を緩和し、健康食品をめぐる規制変更を延期する可能性もあると伝えたことが分かっている。

こうした政府の提案は、英紙フィナンシャル・タイムズが最初に報じた。今回の動きは、スコットランド国民党(SNP)が先月、スコットランドで同様の政策を導入すると公約したことが背景にある。ただしSNPの案では、価格の上限設定は義務化される。

トムリンソン氏はBBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、英政府が強制的に食料品価格の上限を設ける計画はないと語った。

政府関係筋もまた、21日に発表予定の生活費対策の中に、食料品価格を統制する内容を盛り込む計画はないと、BBCに述べた。

この関係筋によると、政府への反発を示していない小売業者との間で協議が続いている。マークス・アンド・スペンサーのマシンCEOの発言に対しては、不満が示されているという。

価格抑制に自主的に応じることについて問われると、トムリンソン氏は、イラン情勢や、物価上昇に対する国民の懸念があることを強調した。

「政府として、もっとできることを広い視野で検討するのは当然のことだ。政府だけでなく業界とも、生活費の問題を抱える人々を支援するためにどのような措置を講じられるかを話し合う必要がある」

インフレ率に関する最新のデータでは、4月の食料品価格の上昇率は3%と、全体のインフレ率(2.8%)を上回ったことが示されている。

一部の業界団体は、年末までに食料品価格の上昇率が10%近くに達する可能性があると警告している。

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「まったくばかげている」

食料品価格を自主的に据え置くという提案をめぐっては、業界の有力者らから激しい反発の声が上がった。

マークス・アンド・スペンサーのマシンCEOは、食料品価格に上限を設けるという政府の動きは「まったくばかげている」と述べた。

「政府は税や規制の負担を一部軽減し、競争の激しい市場で私たちが自由に動けるようにすべきだ」

英小売りオカドの元会長で、野党・保守党のスチュアート・ローズ氏は、BBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、「この構想全体がまったくのナンセンスで、うまくいくはずがない」と語った。

「国家統制の臭いがする。愚かで危険で、決して機能しないだろう」

ローズ氏は、「自由市場経済に勝る仕組みはない」としたうえで、政府介入による価格抑制には「予期せぬ結果」が生じる可能性があると付け加えた。

英小売りセインズベリーズのジャスティン・キング元CEOはBBCに対し、「かなり愚か」な提案で、「競争法上のあらゆる種類の問題」を引き起こすことになると語った。

さらに、イギリスのスーパー業界ではすでに激しい競争が起きているとし、インフレを助長する政策を進めている財務省が、価格抑制を求めるのは「偽善的」だと述べた。

「値上げを招いている要因の一部を政府が抑制すれば(中略)その効果はすぐに(消費者へ)波及するだろう」とも、キング氏は述べた。

こうした中、アメリカ・イスラエルとイランとの戦争により、重要な海上輸送路であるホルムズ海峡が事実上封鎖され、肥料や飼料の価格が急騰していることが、物価上昇の原因になっているとの見方もある。

英国小売業協会(BRC)のヘレン・ディキンソンCEOは、「1970年代のような価格統制を導入し、小売業者に赤字販売を強いるのではなく、政府はまず、食料品価格を押し上げている公共政策コストの削減に注力すべきだ」と指摘。

「イギリスは、スーパー同士の激しい競争のおかげで、西欧で最も手頃な食料品価格を実現している」と付け加えた。

政府関係筋はBBCに対し、BRC側のコメントを「ヒステリックだ」と一蹴した。

イングランド銀行(中央銀行)のアンドリュー・ベイリー総裁は、生活必需品の価格抑制には短期的なメリットがあるかもしれないが、「長期的には、持続可能とは言えないだろう」と述べた。

価格つり上げに対する規制強化

今回の食料品価格の上限をめぐる論争は、レイチェル・リーヴス財務相が価格つり上げに対処するために、消費者保護監視機関の権限を強化する措置を押し進める中で起きた。

権限が強化されれば、規制当局の英競争・市場庁(CMA)には、経済ショックへの対応としてマージンに変更を加えた企業を「名指しで非難」できるようになる。

また、危機的状況に乗じようとする企業を特定するための、迅速な調査権限も付与されることになる。

リーヴス財務相は20日、「世界的な事案によりコストが上がると、真っ先にその影響を受けるのは労働者世帯だ」と述べた。

「危機的状況を悪用し、勤勉な人々を犠牲にして、手っ取り早くもうけようとするような行為は、決して容認しない」