バーナム英首相が初閣議、生活費問題への取り組みを指示

濃い緑色のテーブルクロスで覆われたテーブルに向かって閣僚がそれぞれ、えんじ色のバインダーや白いカップ、ガラスのコップなどを前に座っている。ダークスーツにめがねの首相が両手を組んでテーブルに置き、自分の右を見ながら話している。部屋の奥に白い木製のドアや緑色のカーテンに囲まれた窓などがぼやけて写っている

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画像説明, 初閣議に臨んだイギリスのバーナム新首相(21日、ロンドン・ダウニング街)
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ポール・セッドン政治記者、クリス・メイソン政治編集長

イギリスのアンディ・バーナム新首相は21日、新政権の初閣議を開き、「生活費問題を優先する政府」を率いると約束した。首相は閣僚を前に、生活費対策を優先事項とし、生活費について「もうすぐ助けが届くという感覚」を国民に与えたいと強調した。

首相は閣議冒頭で、家計の負担を軽減するための提案を閣僚に求めるつもりだと述べ、「大小問わず、できることはたくさんある」と強調した。

一方で、政府は常に政策の「財源をどう確保するか」を示すと力説し、支出における「規律」の必要性を強調。政策の財源を確保するには、閣僚が予算配分の優先順位を見直す必要があると認めた。

バーナム氏は20日の就任直後、今後5年間で路上生活対策の予算を3億4000万ポンドを増やすと発表していた。これについては、住宅省の「未割り当て」予算を財源とする見込み。

また、21日朝には閣議に先立ち、家庭の光熱費に対する付加価値税(VAT)の税率を10月から引き下げると発表した。新政権はこの減税措置の財源として、キア・スターマー前首相が実現しようとしていたデジタルID制度の廃止によって、予算を確保する方針。

しかし、そもそもデジタルID制度に予算は計上されていなかったため、減税分の穴埋めにはならないという指摘が早くも出ている。

家庭の光熱費を税率ゼロに

新政権によると、光熱費の減税によって、イングランド、ウェールズ、スコットランドで家庭の光熱費にかかる付加価値税の税率は5%からゼロになる。一般的な家庭では、年間約45ポンド(約1万円)の節約になると推定されている。

北アイルランドでは、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後の取り決めで、欧州連合の税率が光熱費に適用されているため、今回の措置は適用されない。代わりに、生活費対策に充てるための追加資金を財務省が提供する。

首相官邸は、付加価値税減税によって10月から今年度末までに失う見込みの推定税収8億5000万ポンドは、スターマー政権が今後3年間でデジタルID制度を導入するために確保していた18億ポンドで補充すると述べた。

他方、スターマー氏の熱心な支持者で、首相交代に伴い閣僚ポストを失ったダレン・ジョーンズ前首席首相秘書官は、デジタルID制度は「予算を得ていない」と指摘。新政権は、減税分の財源を明確にする必要があると述べた。

野党の保守党とリフォームUKは以前から光熱費減税を要求していたが、新政権のこの発表について保守党は、デジタルIDの費用は既存の予算から捻出される予定だと、政府の予算責任局がかつて述べていたことを指摘した。

「新政権発足からまだ1日しかたっていないのに、労働党はすでに財政をいい加減に扱っている」と、保守党のメル・ストライド影の財務相は批判した。

一方、首相報道官は、家庭光熱費への減税は、各省庁がすでにID制度のために特定してあった予算の「節約分」を財源とすると主張した。

「北の首相官邸」は?

バーナム氏は就任前から自分の政府の目玉政策として、自分の地元のイングランド北西部マンチェスターに新しく首相官邸チーム「ナンバー10ノース」を置くとしてきた。この名称は、首相官邸のあるロンドンのダウニング街10番地(ナンバー10)と、南部のロンドンに対して地方を表す「ノース(North、北部)」を組み合わせたもの。

これについて新政権は21日、具体的な内容を発表。現在、マンチェスター市内で情報機関の政府通信本部(GCHQ)が入居している建物が、「ナンバー10ノース」の当初の本拠地となり、地方経済の成長と地方分権戦略の一部を管理することになるという。

これに加えて、各省庁が「最重要戦略事項」に集中し続けることを保証するため、首相府と内閣府の新しい事務局も設置するとした。

これまでロンドンで働いていた公務員には、マンチェスターへの転勤を促すための転勤パッケージが提示されているもよう。首相官邸は、バーナム首相が「少なくとも週に1日」は「ナンバー10ノース」で働くようにすると述べた。

前政権揺るがした顔ぶれが閣僚に

バーナム新首相は20日に就任して間もなく、主要閣僚を選んだ。21日に初閣議を開くと、閣僚たちは新首相を拍手でたたえた。

21日夜には閣外相や政務次官が次々と発表された。新政権で財務相となったジョン・ヒーリー氏が、前政権で防衛予算をめぐり国防相を抗議辞任した後、国防相代行を務めていたダン・ジャーヴィス氏が、かつての役職だった安全保障担当閣外相に戻った。

新しい国防相には、ウェス・ストリーティング元保健相が選ばれた。スターマー氏の指導力を疑問視する形でストリーティング氏が今年5月に抗議辞任した後、後任の保健相となったジェイムズ・マリー氏は、財務省の財務担当政務次官ならびに主計長官に任命された。

長い楕円形のテーブルを閣僚が囲み、暖炉の前に座るバーナム氏に拍手している。白い壁の閣議室にはシャンデリアがかかり、テーブルクロスとカーテンは同じ濃い緑色。閣僚たちの前には公文書の入った赤いバインダーが置かれている

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画像説明, 初閣議の冒頭、バーナム新首相に拍手する閣僚たち

他方、スコットランド労働党のアナス・サルワル党首は、バーナム政権に参加できるよう、上院議員の議席を与えられた後、ビジネス担当相になる見通し。サルワル党首は今年2月に労働党内でいち早く、公然とスターマー首相の辞任を要求し、情勢を揺るがした。

スコットランド議会の新規則は、スコットランド議会とロンドンの中央議会の両方に議席を持つことを禁じているため、サルワル氏がロンドンの議会で上院議員となるには、スコットランド議会の議席を辞任する必要がある。ただし、地域比例代表制で選出されたため、後任を選ぶための補欠選挙は必要ない。

バーナム新政権では、レイチェル・リーヴス前財務相やデイヴィッド・ラミー前副首相といったスターマー氏の側近たちが政権から退いた。

他方、前エネルギー相のエド・ミリバンド氏が外相となり、バーナム氏の盟友のルイーズ・ヘイ氏が、バーナム政権全体の調整役として、第一国務相、ランカスター公領担当相、内閣府担当相を兼任する。

5月にスターマー氏の指導力を疑問視して地域担当政務次官を辞任したミアッタ・ファーンブレ氏は、エネルギー担当相に昇格した。バーナム氏を支持してきたファーンブレ氏は、新政権がスターマー派を一掃したのだという指摘を否定。BBC番組「ニューズナイト」で、新しい内閣には「多様な意見」が取り入れられたと述べる一方、閣僚になって当然という人物はいないと主張した。

屋内の吹き抜けホールで演台に向かって話すスーツ姿の男性を、同じ階や上の階の廊下から、大勢が見ている

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画像説明, 財務省職員を前に方針を示すヒーリー新財務相(21日、ロンドン)

ヒーリー新財務相は財務省職員を前に、前任者のリーヴス氏が定めた税制と支出に関する規則を順守すると表明。税制と支出に関する規律の維持が、自分にとって「第一の責務」になると述べた。

その一方でヒーリー氏は、政府は財政規律の枠組みの中で「公共投資を最大限に活用する」とともに、民間投資や国際投資も最大限に活用していくと話した。

追加取材:ハリー・ファーリー