ヘグセス米国防長官、対イラン戦費は375億ドルに達したと説明 多額の追加予算を要求

マイクの載った机に向かい、両手を動かしながら話すスーツ住たがの男性。背後に大勢が並んでいる

画像提供, Reuters

画像説明, 米上院歳出委員会の公聴会で追加予算の必要性を力説するヘグセス国防長官(21日、ワシントン)
Published
この記事は約 6 分で読めます

アメリカのピート・ヘグセス国防長官は21日、イランとの戦争でこれまでに約375億ドル(約6兆1000億円)を使ったと明らかにした。5月に示した直近の費用の見積もりから、約80億ドル増加した。この間、ドナルド・トランプ米大統領は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、2月28日に始まった対イラン戦争でこれまでにアメリカ側の死者が18人に上ったと書いた。

ヘグセス氏はこの日、上院歳出委員会の公聴会に出席。政府が要求する国防総省の追加予算670億ドル(約11兆円)について、議会承認が急ぎ求められると強調した。

トランプ政権は6月下旬の時点で、876億ドル(約14兆円)の追加予算を議会に要請。大半は、対イラン戦争に伴う「緊急のニーズ」に充てると説明していた。

この日の上院公聴会は、反戦を訴える抗議者らによってたびたび中断された。最後は、ヘグセス氏と野党・民主党の上院議員との口論で終わった。

ヘグセス氏が連邦議会に姿を見せたのは、アメリカとイランが先週、敵対行為を再開して以降で初めて。米軍は最近、中東で米兵3人が死亡したことを明らかにしている。

ホワイトハウスは4月、国防総省の次年度予算として1兆5000億ドル(約240兆円)を議会に求めた。承認されれば、米軍事費としては現代最高額になる。

アメリカは21日、空爆を11日連続で実施した。イランは報復として、アメリカとその中東の同盟国を攻撃している。

イランとアメリカは4月に停戦に合意したが、それが破綻し、戦闘が再開している。

ヘグセス氏はこの日の公聴会の冒頭、「私たちは危険な世界に生きている」と発言。だからこそ、大胆で迅速な行動が必要なのだと主張した。

抗議者らによって発言を遮られる場面の後、ヘグセス氏は続けて、追加予算の要求は急を要するものだと強調。

「これらの資金がなければ、私たちは深刻な資金不足に直面し、軍人への給与支払い、装備や弾薬の迅速な補充、重要作戦の中断のない継続といった能力が脅かされることになる」と訴えた。

ヘグセス氏はまた、割り当てられた予算は全額、1ドル単位に至るまで米軍の「殺傷能力」を高め、「力による平和の強化」に用いられると述べた。

上院歳出委員会のスーザン・コリンズ委員長(共和党)は、予算で必要額が満たされなかったらどのような影響が出るのかと質問した。

これに対してヘグセス氏は、軍人への現在および将来の訓練を減らす必要が生じると返答。自らの言う軍の資金不足について、ジョー・バイデン前大統領の政権の責任だと繰り返し非難した。

同委員会で最も経歴が長いパティ・マリー委員(民主党)は、この資金の要求を、「あまり理にかなっていない」として反対した。

ディック・ダービン委員(民主党)が、イランとの戦争でかかったこれまでの費用の概算を尋ねると、ヘグセス氏は375億ドルという数字を示した。

民主党関係者2人と、この件に詳しい別の関係者は、イランとの戦争の実際のコストはこれよりはるかに大きいとの見方を、BBCが提携する米CBSに示した。現在の見積もりには、損傷を受けた米軍基地の修復費用などが含まれていないという。

「イランへの戦争反対」と書かれたピンクのTシャツを着て人が、両手で幼い子供の顔写真2枚を持ち立っている。周囲には多くの人が座っている

画像提供, Reuters

画像説明, 公聴会は抗議者らによって中断された

戦費に関しては、国防総省高官が5月12日に290億ドルという数字を発表した。以来、政府による公式な見積もりは発表されていなかった。

国防総省は以前、戦争の最初の1週間で113億ドル程度の費用がかかったと議会に説明していた。

この日の公聴会でヘグセス氏は、今回の資金の求めが承認されれば、アメリカが軍事力で他国に「追いつく」状況に陥るのを確実に避ける「世代を超えた投資」になると主張した。

キルステン・ジリブランド委員(民主党)は、ドナルド・トランプ政権が議会に対し「爆弾のための無制限の金」を求める一方で、アメリカ国民は「家族を養う」ことさえできない状況にあると非難した。また、トランプ大統領がすでに勝利したと述べている戦争で、なぜヘグセス氏は数百億ドルもの資金を要求するのかと問いただした。

公聴会は、ヘグセス氏とギャリー・ピーターズ委員(民主党)との言い争いでクライマックスを迎えた。

同委員はヘグセス氏を「失敗者」と呼び、トランプ政権が新たな「終わりのない戦争」を生み出したと述べた。

これに対しヘグセス氏は、「恥を知れ」とピーターズ委員に言い返し、同委員について「トランプ錯乱(さくらん)症候群」にかかっているとした。「トランプ錯乱症候群」とはトランプ氏とその支持者たちが反対勢力について、トランプ氏を何かと批判するのは批判する側が錯乱しているからだと揶揄(やゆ)するために使う造語。

イラン人作業員が、アメリカ国旗で覆われた棺の上にドナルド・トランプ米大統領とその家族の写真が描かれた反米看板を調整している

画像提供, EPA

画像説明, イランの首都テヘランで掲げられた反米の看板

民主党議員の大多数は追加予算の要求に反対している。共和党内にも不満の声が上がっている。

共和党内の財政タカ派には、防衛予算分を相殺するために他の分野で歳出削減を求める議員が複数いる。

いずれにせよ、下院は23日に夏休みに入る。連邦議会の両院がともに再開するのは9月になる。

ヘグセス氏が公聴会に出席している間、ホワイトハウスにいたトランプ氏は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、2月28日に始まった対イラン戦争でこれまでにアメリカ側の死者が18人に上ったと書いた。

国防総省は21日、米陸軍のマイケル・エマニュエル・スウィントン軍曹(30)がイラクで死亡したと発表した。さらに、エンジェル・ランパーサド軍曹(28)がヨルダンで死亡したとみられるとも発表した。

米軍は前日には、ヨルダンで戦死した別の米軍関係者2人について、イザベラ・ゴンザレス二等兵(19)とタイラー・フィーハン中尉(25)だと公表していた。

トランプ大統領は22日午前、星条旗に覆われた兵士たちの棺が帰国するのに合わせて、米デラウェア州の空軍基地を訪問する予定となっている。