【解説】 英国防相の辞任、スターマー政権と防衛計画にどんな影響があるのか

スーツ姿のスターマー氏とヒーリー氏。スターマー氏は黒い眼鏡をかけ、紺地に白いドットのような柄のネクタイを締めている。ヒーリー氏は赤いネクタイを着けている

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画像説明, スターマー英首相(左)と、国防相を辞任したヒーリー氏
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ヒーリー氏の辞任はスターマー政権への痛烈な批判

クリス・メイソン政治編集長

11日に辞任したイギリスのジョン・ヒーリー国防相のキア・スターマー首相に宛てた書簡では、二つの言葉が際立っていた。

「Unwilling(したがらない)」と「Unable(できない)」。これは、スターマー政権に対する壊滅的で、かつ繰り返されてきた批判だ。

ヒーリー氏は書簡で、「あなたはこの国を守るために国家が必要とする資源を投入できず(Unabel)、また財務省にはその意思がなかった(Unwilling)」と記した。

ヒーリー氏は、先月の地方選挙で労働党が惨敗して以降に辞任した6人目の内閣関係者だ。

また、ルイーズ・ヘイグ前運輸相アンジェラ・レイナー前副首相ウェス・ストリーティング前保健相に続き、スターマー政権から離脱した4人目の主要閣僚となった。

ヒーリー氏の国防相辞任は、英政界の大勢が、長らく待たれていた防衛投資計画(DIP)を政府が公表すると見込んでいた、まさにその日に起きた。

しかし、財源をめぐる政府内の対立により、DIPはいまだ公表される見通しが立たないことが、次第に明らかになっていた。

しかもこれは、ヒーリー氏がブリュッセルで開かれる北大西洋条約機構(NATO)国防相会合に出席する予定の1週間前であり、さらに、労働党党首選の立候補資格を得るために議会復帰を目指しているグレーター・マンチェスター市長のアンディ・バーナム氏が、イングランド北西部メイカーフィールド選挙区の補欠選挙に臨む1週間前でもあった。

そのため、可能であればそれまでに大きな政策を前に進めたいというスターマー氏側の意向があったとしても不思議ではない。

だが今やこの事態だ。すでに政治的に弱体化していた首相は、さらに弱体化した。

ヒーリー氏の書簡からは、同氏が8日午後に成立し、数日後に公表を見込んでいたDIPに関する合意を確認し、それが到底十分とは言えないと結論づけていたことが明らかになった。

より大きな問題は、防衛支出の大幅増に伴う巨額のトレードオフに対して、現政権、あるいはその後継政権がどのように取り組むのかという点だ。

他の分野のどこに削減が及ぶのか、それは借り入れにどのような影響を及ぼすのか、そして、それが税制にとって何を意味するのかが問われている。

さらにスターマー氏は、自らの政権の閣僚がまた一人、しかも、政権が約束を実現できないことへの根深い不満に相当する激しい批判を残して辞任したという、その現実に直面しなければならない。

ヒーリー氏には「不十分」だった防衛予算案

ジョナサン・ビール防衛担当編集委員

ヒーリー国防相の辞任で意外だったのは、同氏がこれまで、辞任するような人物には見えなかったことだ。

ヒーリー氏は常に忠実な閣僚であり、労働党の一員だった。最近の他の国防相とは異なり、他の閣僚や財務省に対する内部批判を意図的に避けてきた。

記者団と会う際にも――我々にとっては不満でもあったが――自身の不満を隠し、私的な場でも公の場でもほぼ同じことを語っていた。

しかし、防衛支出の拡大をめぐり、他のヨーロッパ諸国ほど、あるいは自身が約束していたほど迅速に動けなかった政府の対応は、明らかにヒーリー氏に重くのしかかっていた。

同盟国や防衛産業からは、イギリス政府の言葉がいつ行動を伴うのかと問われていた。

ヒーリー氏自身にも誤りはあった。同氏は、防衛支出のGDP比2.5%への引き上げを予定より前倒しで実現するという政府の約束で十分だと考えており、これ以上の要求はしないと述べたと伝わると、国防高官らは怒りをあらわにした。

しかし同氏はほどなくして、それ以上を求めざるを得なくなった。

ヒーリー氏はまた、省内の他の閣僚を重要な協議や意思決定から排除したとして批判されていた。

それでもなお、同氏の辞任により、イギリス政府は勤勉で献身的な、そしてこれまでは忠実だった閣僚を失ったことになる。

BBCの取材では、ヒーリー氏は水面下で首相に対し、提示されたものよりも大幅な防衛支出の増額を求めていた。

首相が8日にヒーリー氏に提示した案には、防衛支出をGDP比3%に引き上げる時期が明示されていなかった。この3%という数字は、投資負担の大半を担い続けることに疲弊したトランプ政権からの圧力も背景に、イギリス政府自身が掲げている目標だ。

ヒーリー氏はスターマー氏に対し、2030年までにその水準に達することを約束するよう求めていた。ヒーリー氏はかねて、イギリス軍が「空洞化された」と述べ、その現状を立て直すと約束していた。

その同氏にとって、8日に提示された内容は不十分だった。

辞表で述べているように、ヒーリー氏の分析では、提示された追加額は、軍への要求の増大――とりわけ、ウクライナ支援、イランの攻撃から湾岸の同盟国を守ること、そして北極圏におけるロシアの侵略を抑止するための継続的な取り組み――を考慮すると、実際には投資の削減を意味するものだった。

ヒーリー氏には、今後4年間で135億ポンド(約2兆7000億円)の増額が提示されていたが、国防省筋によれば、「財務省のやり口」を考慮すると、実質的には100億ポンドの増額にとどまるという。

これはヒーリー氏が求めていた水準を大きく下回り、大幅な削減を回避するために必要と見積もられていた280億ポンドにも遠く及ばなかった。

関係者によれば、ヒーリー氏はスターマー氏に対し、0.08ポイントの増加では国の安全を維持するには不十分だと伝えていたという。ヒーリー氏に提示された計画では、防衛支出は現在のGDP比2.6%から2030年に2.68%へと引き上げられるにとどまっていた。

究極的にはこれが、ヒーリー氏が辞任に踏み切った理由だ。

ヒーリー氏の国防相としての辞任には称賛の声がある一方で、批判も出ている。

国防省で同氏と働いた一部の関係者は、ヒーリー氏は、最大野党の影の国防相だった前保守党政権時代から、同省の予算がすでに過大な約束を抱えていると警告されていたと述べている。

また、同氏が労働党の「戦略的防衛レビュー(SDR)」を委託したことで、財源の確定していない目標が「大幅に」拡大したという。

防衛関係者の1人は、「困難な部分」は常に国防投資計画に関する合意を得ること、つまり追加資金の確保にあったと指摘した。

別の関係者は、ヒーリー氏が依然として何らかの形で収支の均衡を図れると考え、大規模な調整が可能だと想定していたとし、その前提を「不手際」と表現した。

しかし、不安定な国際情勢のなか、イギリス政府の防衛計画が依然として不透明な状況において、ヒーリー氏の辞任が極めて重大であることは言うまでもない。

その政治的な意味合いは明白で、スターマー氏をより弱い立場に見せることとなる。

しかし、いまだ答えが出ていない大きな疑問が残る。ヒーリー氏の辞任は、国防相としての最後の行動として、果たして軍の立場を強めたのだろうか――という疑問だ。