AIは人間の知性を低下させる? 英グリニッジ天文台が警告

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リヴ・マクマーン・テクノロジー記者
質問や複雑な問題に即座に答えを出す人工知能(AI)ツールが、人間の知性を低下させる可能性があると、イギリスの王立グリニッジ天文台が警告している。
王立グリニッジ天文台は、イギリスで分野別に作られた最古の科学機関の一つ。同機関を管轄するロイヤル・ミュージアムズ・グリニッジ財団のパディー・ロジャーズ代表は、天文学研究の豊かな歴史は、人間の知識と好奇心の力を示すとともに、AIへの「完全な依存」を避けることが必要だと示していると話した。
「即時の答えだけに依存することは、知識や専門性、革新を支える問いかけや、評価の習慣を失う危険がある」と同氏は述べた。
ロジャーズ氏の発言は、同天文台の改革プロジェクト「ファースト・ライト」の中でのもの。このプロジェクトは、「過去350年間にわたるすべての天文学者の情熱を取り込み、その情熱を科学を通じて解釈すること」を目指していると、ロジャーズ氏はBBCに話した。
ロジャーズ氏は、天文学の数々の発見は技術革新がなければ不可能だったと述べた。しかし同時に、人が自分で問いを立て、その答えを追求し、その過程で予期しない情報や結果に遭遇することがなければ、さまざまな発見はなかったと指摘。AIシステムは、こうした予想外の情報や結果を伝えない可能性があると話した。
ロジャーズ氏は、初期の天文学者たちは「天体について大量のデータを構築」し、そのデータは後に「本人が考えもしなかった用途に使われることになった」と話した。その研究には、「機械であればやらないはずの」不要なことも含まれていたとも、同氏はBBCに述べた。
「そういうことを人間はやった。そして、研究者らが書き残したものが膨大なリソースとなって、150年後、地球上の航行に何が影響しているのかについて予想の検証に使われた」

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AIは、科学的発見を支援するためにも使われてきた。
2024年には、コンピューター科学者のサー・デミス・ハサビスが、生命の構成要素であるたんぱく質に関する「革新的」な研究により、ノーベル化学賞を共同受賞した。
米アルファベット傘下のAI企業グーグル・ディープマインドの最高経営責任者(CEO)でもあるサー・デミスは、ほぼすべての既知のたんぱく質の構造を予測するためにAIを使い、「アルファフォールド2」というツールを開発した。
ソーシャルメディア「リンクトイン」の共同創業者でベンチャーキャピタリストのリード・ホフマン氏は、AIを「認知的卓越性」の「変革」と表現した。
ホフマン氏は先に、BBCのポッドキャスト番組「ラディカル」に出演した際、「AIを反作用剤として使うべきだ」と話した。
「例えば、『自分のアイデアのどこが間違っているのか』といった使い方だ。『私はXだと考えるが、それに反対するか』という質問の仕方が、AIの基本的な使い方のひとつだ」
研究の中でAIを使う利点は、学者や学生の間でも共有されている。これには、アイデアに異議を唱えたり、解決策を協働で検討したりするといった使い方が含まれている。
英オックスフォード・ブルックス大学の講師の1人は昨年6月、BBCに対し、「責任ある形で使われる場合、AIツールは学生が学習内容の中でも特に重要な部分に注目し、自分自身の発達を自分で向上させられるようになる」と述べた。
一方で、単に思考をAIに「外注」するだけでは、AIの限界が浮き彫りになるとも付け加えた。
限界と可能性
文字、画像、動画、音声などでますます複雑な指示に応答できる生成AIは、急速なペースで開発が進んでいる。
チャットボットは単純な補佐役から、おしゃべりな伴侶へと進化した。画像生成では、写真のようにリアルなコンテンツを作成する能力が危険なほどに高まった。最新の高度モデルは、数十年前のソフトウエアのバグを発見しつつあると言われている。
こうした技術の発展は、称賛されると同じくらい、細かく精査されている。そして、AIの利用者は、その限界や依存の危険性に気を付けるよう、警告を受けながら使っている。
グリニッジ天文台のロジャーズ氏は、ウィキペディアのような従来のツールでは、「何かに関心があれば、おそらく根本的な情報源に立ち返って確認することができたし(中略)その信頼性を確かめることができた」と述べた。
一方、そうした情報は、AIが素早く提供する回答では省かれる可能性があるという。
「結果として人は、関連性のある情報や検証可能な情報から、ますます遠ざかってしまっている」のだとロジャーズ氏は指摘した。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のアヌシュカ・シュミット准教授(情報システム)は、「過度な依存など、技術によって生じる有害で意図しない影響は、新しいものではない」と話す。
しかし、人間のように多くの作業をこなせる会話型AIシステムにより、「人は仕事や学習、あるいは余暇といった場面で、認知作業をするための努力、何かや誰かとかかわるための努力を、劇的なまでに放棄しやすくなった」と、シュミット氏はBBCに話した。
シュミット准教授によると、いわゆる「認知の外注」に関するさまざまな研究が、「AIを使うことで、人の能力や記憶や学習がいかに素早く、かつ否定的な影響を受けるか」を明らかにしている。それだけに今後は、いつどこでAIを使うかを考えていくことが重要だと、准教授は述べた。
それでもなお、人が自分で探さなくても情報を提供してくれる生成AIツールは増え続けている。
たとえば米グーグルの検索エンジンでは、これまで検索結果の上部に表示されていた要約文やリンク一覧が、AIによる概要にとって代わっている。同様の取り組みは、TikTokやXといったソーシャルメディアでも見られる。








