プライバシー侵害訴訟で敗訴のハリー英王子やエルトン・ジョンさんら7人、最大75億円の費用負担の可能性

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画像説明, (左から)ハリー王子、エリザベス・ハーリー氏、エルトン・ジョン氏
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ドミニク・カシアーニ国内・法律担当編集委員、ヘンリー・ムーア記者

イギリスのサセックス公爵ハリー王子や歌手サー・エルトン・ジョンなど計7人の著名人は21日、英紙デイリー・メールと同メール・オン・サンデーの発行元を訴えたプライバシー侵害訴訟で敗訴したことを受け、訴えた出版社の訴訟費用を支払うよう高等法院に命じられた。この費用は最大3450万ポンド(約75億円)になる可能性がある。

高等法院のマシュー・ニックリン判事は、敗訴した原告7人に対し、デイリー・メールとメール・オン・サンデーの発行元アソシエイテッド・ニュースペーパーズ・リミテッド(ANL)に対し、今月28日までにまずは954万ポンドの初期費用を支払うよう命じた。

ニックリン判事は、原告7人が負担する訴訟費用について、裁判前に合意した金額をはるかに超えた異例の裁判だったと指摘。さらに、原告らの主張内容が「極めて不合理」だったと批判した。

同判事は7月7日に、デイリー・メールとメール・オン・サンデーによる情報収集は違法だったという原告たちの訴えを退けた。ANLは、取材方法の違法性を否定していた。

ハリー王子ら原告7人は、10月2日までに控訴することができる。

他の原告は、サー・エルトン・ジョンと夫のデイヴィッド・ファーニッシュ氏、野党・自由民主党のサー・サイモン・ヒューズ元副党首、反人種差別活動家ドリーン・ローレンス女男爵、女優のセイディ・フロスト氏、女優のリズ・ハーリー氏。

原告7人は、敗訴した場合にANLの訴訟費用を最大1620万ポンドまで支払う保険に加入していた。しかし、21日の高等法院命令を受け、ANLは訴訟費用として最大3450万ポンドを回収しようとする可能性がある。つまり、公爵らは約1800万ポンドを自己負担することになるかもしれない。

ただしニックリン判事は、「3400万ポンドを超える訴訟費用の請求は、その金額を見るに、過剰だ。このため、アソシエイテッド社が現在請求している費用がどれも合理的に発生したもので、その金額が妥当なのかどうか、重大な懸念が生じる」と述べた。

一方で判事は、「アソシエイテッド社が回収可能な費用に上限を設けないことにした」と、判断を示した。その理由については、上限設定は「あまりにも大雑把で、不公平になる恐れがあり、独断的だという非難を受けやすくなる」からだという。

判事はさらに、ANLの費用は補償基準に基づいて決定されるべきだと判断を示した。これはANLがいくら回収できるのかに関して、(金額がすでに決まっている場合を除いて)ANLにとって有利な決定となる。

判事は、原告7人が「重大な不正行為の申し立てを、1件たりとも自主的に取り下げなかった」ことは「注目に値する」と付け加えた。

「この点は重要だ。重大な犯罪行為や重大な不正行為の疑惑が、そのような形でいつまでも個人に影を落とすような状態にしておくのは、適切なことではない」と判事は述べた。

「当事者が申し立てを追及しない場合、または申し立ての適切な証拠の根拠がなくなった場合は、申し立てをはっきりと明示的に取り下げるべきだ」、「原告たちがそうしなかったことは、通常の訴訟上の判断とは言えない。重大な申し立てを取り扱うための適切な方法でも、規律のとれた方法でもなかった。極めて不合理だった」と、判事は原告らを批判した。

スーツやコートを着た4人の写真が並べてある

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画像説明, (左から)原告のローレンス女男爵、サー・サイモン・ヒューズ、セイディ・フロスト氏、デイヴィッド・ファーニッシュ氏

判決を受けてANLは21日、「新聞社とその記者、編集者、経営陣の評判を破壊しようとする動きに対する、痛烈な批判」だと歓迎した。

今回の判決に先立ち、ハリー王子と妻メガン妃はアメリカからイギリスに帰国すると発表したばかり。夫妻の子供のアーチー王子(7歳)とリリベット王女(5歳)は、9月からイギリスで学校に通う予定となっている。

プライバシー侵害訴訟では、ハリー王子や他の原告を含む数十人が法廷で証言した。王子は証言するためアメリカから一時帰国し、出廷した。

対するANLの発行媒体の現役記者や元記者、幹部の多くが、違法行為を否定する証言を行った。

自由民主党のヒューズ元副党首はBBCに対し、判決に「失望した」と述べた。

「私は今、訴えに対する判決と訴訟費用に関する判決の両方を検討し、どちらかの判決、あるいは両方の判決について控訴するかどうか、必要な時間をかけて検討している」とも、ヒューズ氏は述べた。

先月の判決を受けて、ハリー王子とローレンス女男爵(1993年に息子スティーヴンさんが殺害され、世間の注目を集めた)は共同声明で、「私たちは正義と責任追及を求めて法廷に立った。しかし、どちらも得られなかった」と述べた。

「これは完全な、そして明白な隠蔽工作だが、残念ながら全く予想外というわけではない」と2人は付け加えた。

費用めぐる複雑な審理へ

このような民事訴訟では、敗訴した側は相手が負担した「妥当な」弁護士費用を弁償するというのが、法的な慣例となっている。また、敗訴した側は自分の弁護士費用も負担しなくてはならない。こうした費用は通常、裁判前の合意をもとに上限が決められる。

ANLは、訴訟費用にいくらかかったのか細かく把握する前の段階で、990万ポンド超の暫定支払いを要求していた。しかし勝訴後に初めて、当初合意していた上限額1600万ポンドをはるかに超える金額を費やしていたことが明らかになった。

訴訟費用専門の元判事で現在はケイン・ナイト法律事務所に所属するコリン・キャンベル氏は、その超過支出の規模からして、法廷闘争はまだ完全に終わっていないと話す。

「この命令は、ANLにとって大きな勝利だ」と元判事は述べた。「ニックリン判事がかつて認めた費用予算に、ANLはもはや制約されなくなる」。

「原告の誰も不正の証言をしていないと判事は明言したが、それでも今回の費用負担を命令したのが、注目される」とも、キャンベル氏は指摘した。

「ただし、ANLの勝利確定にはほど遠い。裁判官は、同社が見積もった3450万ポンドの訴訟費用を厳しく批判し、極めて高額で過剰であると断じ、深刻な懸念事項だと述べている」

「その批判は、出版社が最終的に費用回収を求める際に、非常に重要な意味を持つ可能性がある」