スペインが対イタリアの国境管理を強化、飛び地セウタへの移民めぐる対立深まる

海を背に大勢が集まり行列し、手前で赤十字のついたシャツやチョッキを着た人たちが白いビニール袋に入った物資を配っている

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画像説明, セウタのビーチに並ぶ移民に食べ物を配る赤十字職員たち(4日、スペイン・セウタ)
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アフリカ北端にあるスペインの飛び地領土セウタにモロッコ側から数万人の移民が大挙して押し寄せた問題を機に、スペインとイタリアの対立が悪化するなか、スペインは7日、イタリアからの飛行機や船舶に対して入国審査を実施すると発表した。両国は共に欧州連合(EU)加盟国で、出入国審査のない自由な行き来を認めるシェンゲン協定の当事国だが、7月30日からセウタへ約7万8000人の移民がモロッコから押し寄せたことを受け、イタリアは31日、スペインとのシェンゲン協定を一時的に停止した。

スペイン政府は声明で、イタリアからの乗客およびイタリアから到着する他国からの訪問者に対して8日午前0時からパスポート、国籍、ビザの確認を実施すると発表した。スペインが「継続的な不法移民の圧力」に直面しているためだという。この入国審査は9月7日まで続けるが、「その導入に至った状況の変化により、期間を変更する必要が生じた場合はこの限りではない」と説明した。

スペインはさらに、イタリアに対し、入国審査を8日までに撤回するよう要求した。

これに対してイタリア政府は同日、「最後通牒」は受け入れないと表明。さらに、「どのような状況だろうと、そしてイタリアに対する安全保障およびテロのリスクが完全に排除されるまで、スペインから到着する第三国国民に対するシェンゲン協定の適用停止措置を、少なくとも8月15日までは再検討するつもりはない」と付け加えた。

シェンゲン協定は、EU加盟国を中心とする29カ国の間で、原則的に出入国審査なしの各国間の自由な行き来を認める取り決め。

イタリアはさらに、15日にはセウタに「新たな移民の波」が押し寄せると予想していると付け加えた。

スペイン南部とモロッコ北部を示した地図。スペイン南部沿岸のマラガ、ジブラルタル海峡近くのスペイン領セウタ、北アフリカ沿岸のメリリャなどの場所が示されている

イタリア当局は、入国審査を実施する地方自治体は、スペインからイタリアに到着するスペイン国民およびその他のヨーロッパ諸国の国民が最大限快適に過ごせるよう「できる限りの対応」をしていると主張している。

さらにイタリア政府は、スペイン国民はイタリア到着時の審査を免除される、審査はEU非加盟国の居住者のみに適用されると強調した。

しかし、スペイン紙エル・パイスは、複数の空港ターミナルでこのところ長蛇の列と待ち時間が発生しており、スペインからの到着客は審査のために専用の列に誘導されていると報じた。

イタリアとスペインの間に、地続きの国境はない。しかし、かねてEU域内の移民規制強化を訴えてきたジョルジャ・メローニ首相が率いる保守政権は、セウタに入った移民がシェンゲン協定によってそのままイタリアへ移動しかねないと主張した。

これに対し、スペインの社会労働党を率いるペドロ・サンチェス首相の政権は強く反発。そもそもセウタはシェンゲン圏に含まれていないため、モロッコからスペイン領セウタに入った移民が何の制約もなくヨーロッパ本土のシェンゲン圏に入ることはできないため、メローニ政権の主張は「根拠のない主張」によるものだと批判した。

晴れた海岸で大勢が並んで砂浜に座っている

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画像説明, 数百人の移民が支援物資を受け取るためにセウタの海岸に並んだ

シェンゲン協定の一時停止は前例がないわけではない。イタリアはスロヴェニアとの国境管理も継続している。

イタリアがスペインに対してシェンゲン協定を1カ月間停止するという決定を、フィンランドとデンマークは支持した。チェコ共和国は、スペインの加盟資格の一時停止を求めた。

スペイン・セウタとモロッコの位置を示した人工衛星図と、国境付近で海に突き出した岩に設置された国境フェンスの周りを泳ぐ人たちを組み合わせた図

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7月末にセウタに到着した移民のほとんどは、数日以内に送還された。しかし、約1400人の未成年者が今もセウタに残り、中には「非常に幼い少年少女」も含まれているという。

スペインは、モロッコから大量に越境者が押し寄せる第2波が予想されるとは、発表していない。しかし、エル・パイス紙によると、モロッコのソーシャルメディア利用者が再上陸を計画しているという情報が飛び交い、こうした臆測を呼んでいる。

スペイン首相府は同紙に対し、状況を注視しているものの、先週のような事態が繰り返されるとは考えていないと述べた。

動画説明, スペイン飛び地セウタに約6万人押し寄せ……ほとんどがモロッコへ戻る

なぜモロッコから数万人がセウタへ押し寄せたのか、正確な理由は依然として不明だが、EUのマグナス・ブルナー移民担当委員は、偽情報を拡散する犯罪組織が原因だとの見方を示している。スペイン政府もこれに同意している。

7月末の事態は、セウタおよびスペインのもう一つの飛び地メリリャを目指した移民が、海上で足止めされた場合、モロッコへ一方的に送還することはできないとの判決をスペイン最高裁判所が下した後に起こった。

モロッコ側は、この危機の責任はスペインの最高裁にあると非難。匿名の政府関係者は地元メディアに対し、「制度の抑止力が崩壊し、ダムが決壊したのは、犯罪者たちの重みではなく、裁判官の判決が原因だ」と述べている。

他方、セウタへ向かって大勢が海を泳いでいる事態を前に、なぜモロッコの国境警備隊がそれを阻止しようとしなかったのかが、疑問視されている。

セウタとメリリャの飛び地は、スペインとモロッコの間で長年外交上の争点となってきた。モロッコは飛び地2カ所に対するスペインの主権を認めていない。