インドの「ゴキブリ人民党」抗議運動、教育相の辞任受け終了 医大入試問題の漏洩が抗議のきっかけ

屋外での集会で、数人がステージでこぶしを上げて勝利を宣言している。周囲に集まった人々もこぶしを上げて応じたり、スマホを掲げて撮影したりしている

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画像説明, ゴキブリ人民党(CJP)を立ち上げたアビジート・ディプケ氏(中央に立つ白いTシャツの男性)は、教育相の辞任を民主主義の勝利だと評した(25日、ニューデリー)
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ギータ・パンディ記者、ヨギタ・リマエ国際特派員

インドで25日、ダルメンドラ・プラダン教育相が辞任した。インドではここ数週間、医大入試問題の漏洩(ろうえい)をきっかけに、教育制度の改革を求める市民らが、人工知能(AI)が生成したゴキブリの画像をマスコットとする「ゴキブリ人民党(CJP)」を立ち上げ、風刺と抗議の活動を続けていた。

プラダン教育相はこの日、ソーシャルメディア「X」で辞任を発表。「若者の願望、夢、期待を尊重している」とし、ここ数日の出来事に「心を痛めている」とヒンディー語で書いた。

「ジャンタル・マンタルおよび全国各地の状況を受け、またそれを反国家勢力が悪用するのを防ぐため、国家の団結を維持するため、インドの学生全員の未来が面倒な法律問題に巻き込まれたりしないようにするため、子どもたちが学業に専念し、キャリア形成に集中できるようにするため、私は首相に辞表を提出した」とプラダン氏は表明した。

ジャンタル・マンタルとは、首都デリーでの抗議活動の中心地となっていた、ムガル帝国時代の日時計の名称。

インドの伝統的な服を着た中年男性が、机に座って話している。背後にはインド国旗が並べられている

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画像説明, 教育相を辞任したダルメンドラ・プラダン氏

プラダン教育相の辞任のニュースが伝わると、CJPの創設者アビジート・ディプケ氏は感情をあらわにしながら、ジャンタル・マンタルの仮設ステージで「やったぞ!」と叫んだ。 大歓声が上がり、抗議者らは歌ったり踊ったり、スローガンを叫んだり、お菓子を配ったりして盛大に祝った。

CJPは、教育相の辞任は民主主義の勝利だと宣言し、抗議活動の終了を発表した。しかし、CJPのリーダーたちが現場を離れてから数時間たち、夜になってもなお、多くの人々が会場に集まっていた。

多くの人がBBCに対し、自分たちはこの日を何週間も待ち望んでいたため、祝ってからでないと帰る気にはなれないと話した。

CJPは実在する政党ではないが、若者の不安や不満を表明する強力なプラットフォームへと発展した。さらにその抗議活動を通じて、ナレンドラ・モディ政権に対する国民の怒りが、近年で最も目に見える形で表明される事態となった。

一連の抗議は、5月に発覚した医大系共通入試問題の漏洩疑惑をきっかけにしたもの。5月に全国で230万人近くが受験した難易度の高い試験が、疑惑発覚を受けて取り消された。政府調査の末、試験問題の漏洩が確認され、再試験は6月に行われた。一度受けた試験が取り消されことを苦に、20人以上の学生が自殺したと、CJPや遺族は主張している。

20日には、国会議事堂へ行進していた人々を警察が暴力的に取り締まり、数十人が負傷した。この事態を受けて、抗議活動はますます勢いを増していた。

「ゴキブリ」に支持集まる

若い女性が笑顔で、抗議成功を喜ぶプラカードを掲げている。アクションヒーロー風に描かれたゴキブリ2匹がサングラスをかけ、腕を組んでポーズをとっているイラストが印刷されている。

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画像説明, 教育相の辞任を、発表の翌日にも喜ぶ若者たち(26日、ムンバイ)

CJPは、インド最高裁判所の長官が、ジャーナリズムや社会活動に転身する失業中の若者を「ゴキブリ」と表現したことをきっかけに設立された。長官は後に、自分の発言は「偽の学位」を持つ人々を指したものだったと釈明したが、その頃にはこの言葉は独り歩きを始めていた。

この運動を率いたディプケ氏は、30歳の政治コミュニケーション戦略家で、米ボストン大学の元学生。

CJPは瞬く間にインターネット上で大きな支持を集め、最も嫌われている昆虫の一つを、反抗と不屈の精神の象徴へと変えた。インスタグラムでは2600万人のフォロワーを獲得した。

同党はインドの教育制度改革、試験問題の漏洩に対する説明責任の強化、そしてプラダン氏の教育相辞任を求めた。

さらに、活動家で教育者のソナム・ワンチュク氏が6月28日に抗議活動への支持を表明し、無期限のハンガーストライキを開始したことで、CJPの活動は世界的な注目を集めるようになった。

群衆の中の一人の若い男性が白目をむいて意識を失っているように見えるのを上から撮影した写真。周囲の人々が介抱している

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画像説明, 20日の抗議運動に対する警察の弾圧で、多くのデモ参加者が重傷を負った

ワンチュク氏の健康状態が悪化するにつれ、群衆は膨れ上がった。

ワンチュク氏は18日、警察によって抗議現場から強制的に排除され、病院に搬送されたが、それでもハンストを続けた。断食を中止したのは、政府から要求を検討するとの確約を得た24日の早朝だった。

抗議が続く間に、インドのほとんどの主要野党、活動家、そして多くの著名人が、連帯を示した。 抗議活動の現場では、多くのポスターやスローガンがモディ首相に向けられていた。

かつて首相を支持していたが、今は反対に転じたという複数の人物にBBCは話を聞いた。

「彼が良いことをしていた頃は支持していたが、徐々に、彼は宗教に基づいて人々を分断しているだけで、それ以外のことは何もしていないと気づいた」とラディカさんは話した。

野党指導者らは25日、プラダン氏の辞任を歓迎した。大勢がこれを、若者主導の運動の勝利だと評した。

モディ政権へ打撃

白いシャツを着て、ひげをたくわえた男性が、マイクを持って話している

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画像説明, CJP創設者のディプケ氏は25日、ニューデリーで行われたデモで演説を行った

抗議者たちの要求は、教育相の辞任だった。しかし、今回の活動がモディ首相の個人的なイメージと、その無敵のオーラに深刻な打撃を与えたことは明らかだ。

2014年の政権発足以来、モディ政権は異論をほとんど認めず、抗議活動を厳しく取り締まってきた。そのため、プラダン氏の辞任はインド国内で一大事と見なされている。

しかし、政府が大規模な抗議活動に直面したのも、譲歩を強いられたのも今回が初めてではない。2021年には、農業従事者らによる1年にわたる抗議活動の後、政府は農業関連法を撤廃した。

学生らの抗議活動は、宗教、カースト、社会階層といったアイデンティティーを超えて、インドの中流階級の多くの人々の共感を呼んだ。その中で大勢が、インドにおける教育機会や雇用の不足に対して、怒りの声を上げた。

20日には警察と準軍事組織が警棒や木の棒で若い抗議者らを殴打し、催涙ガス弾を発射するという暴力的な弾圧を行った。これを受けて、政府への圧力が高まった。

20日の摘発で約300人が病院に搬送された。警察によると、負傷者の少なくとも半数は治安部隊員だという。また、約70人のデモ参加者が逮捕されたが、そのほとんどは後に保釈された。

モディ首相は、抗議者たちを約5週間にわたり無視し続けた挙句、23日にようやく沈黙を破り、「試験問題漏洩に関与した者に対し、迅速かつ厳正な処罰を確実にするため、特別法廷を設置することを決定した」と述べた。

その日の夜遅くにはビデオメッセージを投稿し、試験問題の漏洩に関する厳しい新法を準備中だと述べた。首相は、法案の草案を受け取ったことを明らかにし、近いうちに議会に提出したいと語った。

ソーシャルメディアには、モディ首相を揶揄(やゆ)する投稿が数千件もあふれている。首相が国民の怒りを鎮めるために公開した動画も、ジョークやミームのネタにされた。

プラダン氏の辞任を受けて、CJP創設者のディプケ氏はXに声明を投稿し、闘いはまだ終わっていないと述べた。

ディプケ氏は、医大入試がいったん取り消された後に自殺した学生の遺族が補償を受けられるよう、今後も闘い続けると述べた。

また、20日に議会へ行進しようとしたCJP支持者らに対し、警察官が過剰な武力を行使したとして、警察官に対する措置を改めて求めた。

「覚えておいてほしい、ゴキブリには手を出してはならないと」と、彼は付け加えた。