スペイン議会、87歳女性の強制立ち退き受けた住宅危機対策を否決 早期選挙の可能性も

グレーのスーツを着たサンチェス首相が、議会の壇上で演説している様子を右側から写した写真
画像説明, ペドロ・サンチェス首相は政令を支持するよう議員らに訴えたが、否決された(2日、マドリード)
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ガイ・ヘッジコー記者(マドリード)

スペイン議会は2日、住宅危機に対処するために左派連立政権が提出した一連の措置を一連の措置を否決した。ペドロ・サンチェス首相にとって大きな痛手のため、総選挙の前倒しを求める圧力が強まっている。

サンチェス政権は9月29日、賃借人の強制退去を一時的に停止するなどの政令を2件発表した。これは、首都マドリードで87歳の女性が70年以上住んだ自宅から立ち退きを強いられたことをきっかけに、国内各地で抗議活動が起きた事態に対応してのもの。

政令は即日発効されたが、1カ月以内に議会の承認を得る必要があった。

しかし議員らはこの日、最初の政令を178対172で否決。二つ目の政令も184対166で否決した。

議事堂の外には、討論が行われている間、数百人のデモ参加者が集まった。

否決が発表されると、抗議者たちは「恥を知れ」、「お前たちの利益は我々の苦しみだ」などと叫んだ。

サンチェス首相率いる与党・社会労働党と左派・スマール連合からなる少数与党政権は、議会で過半数議席を確保していない。今回の敗北がその事実を浮き彫りにしただけに、来年の夏まで予定されていなかった総選挙を前倒しで実施するのではないかという臆測が強くなっている。

関係筋がスペインのメディアに話したところによると、政府は週末にかけて今後の対応策、そして議会を解散するかどうかを決定する予定だという。

車いすに乗った女性が、アパートの部屋にいる。部屋にはダイニングテーブルと食器だながある
画像説明, アバスカルさんはアパートの立ち退きを命じられたが、戻ることが後から認められた(23日撮影)

スペインの住宅危機を象徴する存在となったマリカルメン・アバスカルさんは、父親が1956年から借り始めたマドリードのアパートに、両親の死後も家賃の上限が設けられた状態で住み続けていた。しかし、2018年にこの物件を購入した投資会社ウルバジェスティオンによる大幅な値上げで、家賃を支払えなくなった。

アバスカルさんは9月23日、70年以上住み続けたアパートから担架に乗せられ、強制的に立ち退きさせられた。強制退去が報じられると、数百人の抗議者が立ち退きに反対するために集まり、近年高騰している賃貸住宅市場への対応を求める全国的な運動を引き起こした。

社会的な反発を受け、ウルバジェスティオンはアバスカルさんを低家賃で元の住居に戻すことで合意した。しかし抗議活動は続いており、抗議者たちあはマドリードをはじめとする各地の広場を占拠し、テントを張っている。今週末にも、各地でデモ行進が予定されている。

抗議者たちは住宅危機をめぐり、ゼネストも呼びかけている。

夜間の屋外で、女性が鍋をたたいて抗議している
画像説明, アバスカルさんの立ち退きは、住宅危機終結を求める抗議活動を引き起こした(1日、バルセロナ)

政府の政令の一つには、弱い立場の賃借人の立ち退きを2030年まで停止すること、2028年以前に期限切れとなる賃貸契約の2年間の延長、観光アパートへの増税、そして政府が「ハゲタカファンド」と呼ぶ投資会社による住宅用不動産の購入制限などが含まれていた。

二つ目の政令には、賃貸契約の自動更新が含まれていたため、ことさらに異論が多かった。これは、左派や賃借人組合の多くの人々が強く求めていたことだった。

しかし、保守派の国民党(PP)と極右VOX(ボックス)は、両案に反対票を投じると表明していたため、サンチェス政権はカタルーニャ州とバスク地方の民族主義政党の支持に頼らざるを得ない状況となっていた。

しかし、中道右派で独立支持派の「カタルーニャのための連合(JxCat)」は1日夜までに、両案への反対を表明。法案は否決されるだろうと結論付けた。

2日の議会での討論では賛成派と反対派が激しく衝突し、議員たちが怒りをあらわにする場面もあった。

サンチェス首相は採決の直前、「私はあなた方に勇気と一貫性を持って行動するようお願いするのではなく、懇願している」、「なぜなら、これらは単なる野心的な措置ではなく、必要な措置だからだ」と訴えた。

「住宅市場に秩序と人間性をもたらしてほしい。そうしなければ、社会は崩壊してしまう」

社会党と連立するスマール連合のパブロ・社会福祉担当相も、「今日、二つの政令に反対すれば、それは富豪の利益を守り、スペイン国民に背を向けることを意味する」と主張。スペインの労働者の賃金から家賃収入を得ておきながら、スペインで納税することさえしない国際富裕層を守るのかと、政令反対派を批判した。

しかし、JxCatのミリアム・ノゲラス氏は、政令は拙速に作成されたもので、厳密さに欠けると指摘。 「(ハゲタカ)ファンドが買い続け、投機を続け、立ち退きが続くことを許すことになる(中略)この政令は、達成しようとしていることとは正反対の効果をもたらす」と述べた。

右派政党は、政府の介入によって大家や地主層の不安は増し、物件を賃貸市場に出そうとしなくなってしまうため、結果として家賃がさらに高騰すると主張している。

国民党のフアン・ブラボ議員は、「住宅は政令によって安くなるのではない。住宅の数が増えれば安くなる」と述べた。