アメリカ、日本など60カ国・地域に最大12.5%の追加関税を検討 強制労働への懸念を理由に

画像提供, Getty Images
ミッチェル・ラビアク経済記者
アメリカは2日、日本を含む60カ国・地域を対象に、強制労働によって製造された製品の取引を抑制する取り組みが不十分だとして、10~12.5%の追加関税を課す案を発表した。アメリカの輸入は対象の国・地域からのものでほぼ全量を占める。
米政権が昨年導入した世界的関税措置をめぐっては2月、米連邦最高裁判所がその大部分を無効と判断した。それ以来、ドナルド・トランプ大統領は、今回を含め2度にわたり新たな追加関税案を打ち出している。
米通商代表部(USTR)は2日、60カ国・地域を新たな追加関税の対象とする理由について、強制労働によって製造された製品の輸入問題に対処できていないためだと説明した。
これに対し、イギリスは、強制労働対策を進めていると反発。中国は、強制労働による製品は存在しないと否定した。欧州連合(EU)も、この追加関税は不当だと訴えている。
インドのアナリストの1人は、インドとアメリカの貿易交渉が続く中での今回の動きは、圧力をかけるための戦術だとの見方を示した。
複数の人権団体は、中国では確かに強制労働が存在するとしたうえで、イギリスをはじめとする各国が、企業のサプライチェーンに強制労働が入り込まないよう、さらなる対策を講じる必要があると指摘している。
一方で、強制労働問題に対処する手段として、アメリカの関税措置が有効かどうかについては疑問を呈した。
関税措置の対象は、イギリス、EU、カナダ、インド、日本など、合わせてアメリカの輸入のほぼすべてを占める国・地域となっている。
米政府は、強制労働によって製造された製品を購入する国々との取引は、アメリカにとって不公平だという立場を取っている。
米通商代表部のジェイミソン・グリア代表は、こうした状況が「アメリカの労働者が不公平な条件下で世界的な競争を強いられる構造を生み出している」と述べた。
今回発表された関税案は、まだ発動されていない。これを実施するには、トランプ政権は所定の手続きを踏む必要がある。
関税案は、グリア通商代表が3月に開始した調査を受けて発表された。この調査は、60カ国・地域を対象に、強制労働を禁止する措置を講じているかどうかがポイントだった。
調査報告書は54カ国・地域について、「強制労働によって全てまたは一部がつくられた製品の輸入を法的に禁止しておらず、そのような禁止措置を効果的に実施していない」と結論づけた。
また、カナダ、EU、エクアドル、インドネシア、メキシコ、パキスタンの6カ国・地域については、「強制労働に絡む輸入禁止措置を効果的に実施できていない」とした。
通商代表部は2日、カナダ、EU、イギリス、インドネシア、メキシコ、パキスタン、アルゼンチン、バングラデシュ、カンボジア、エルサルバドル、グアテマラ、マレーシア、台湾からの輸入品に10%の追加関税を課す方針だと明らかにした。
中国やインド、日本を含む残りの45カ国には、12.5%の追加関税を課す方針という。
「不当な」措置
アメリカの発表を受け、イギリス政府報道官は、「我々は、英国内および世界的サプライチェーンにおける強制労働問題に対処し、英企業が強制労働や人権侵害に加担することがないように取り組んでいる」と述べた。
「我々は交渉の一環として、米政権と定期的に協議しており、我々が講じている措置について明確に伝えてきた」
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの企業・人権問題担当ディレクター、ピーター・フランケンタル氏はBBCに対し、「貿易措置は強制労働のリスクに対処するうえで一定の役割を果たし得るが、効果的な法執行、企業の説明責任、そして人権問題に関するデューデリジェンス(適正評価)の義務付けの代わりにはならない」と述べた。
そして、「英政府は早急に自国の体制を整えなければならない。その点に関しては、依然として大きな改善の余地がある」と付け加えた。
イギリスの独立反奴隷制委員は、「イギリスの法律は、サプライチェーンにおける強制労働問題に対処するには十分なものではない」とした。
同委員は、イギリスが毎年、約200億ポンド(約4兆3000億円)相当の、強制労働と関連している可能性のある製品を輸入していると試算している。
カナダのマーク・カーニー首相は、アメリカの追加関税案について「驚きではない」とし、カナダの対米輸出の大部分には影響しないだろうとの見方を示した。
中国は、一方的ないかなる関税にも反対するとしたうえで、自国に対する強制労働疑惑を否定した。
中国外務省の毛寧報道官は、「中国には、いわゆる強制労働など存在しない。この問題を政治的操作の口実に使うことに、我々は反対する」と述べた。
しかし、複数の国際人権団体は、中国では、とりわけ新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の少数民族ウイグル族に対する強制労働が存在すると指摘している。
欧州委員会は、EUとしては昨年にトランプ政権と合意した貿易協定に引き続き取り組んでいるとしている。
「EUは、こうした理由に基づく関税措置は不当だと考えている」と、欧州委員会の報道官は述べた。
インド・デリーに拠点を置くシンクタンク「グローバル・トレード・リサーチ・イニシアチヴ」のアジャイ・スリヴァスタヴァ氏は、インドは今回の関税案の法的根拠に異議を唱えるべきだと指摘。その理由として、関税案が、米通商法301条の適用範囲を拡大するものだからだとした。1974年の通商法301条は、貿易相手国の不公正な取引上の慣行に対して当該国と協議することや、問題が解決しない場合の制裁について定めている。
また、今回の動きは「アメリカによるより広範な圧力戦術」の一環に見えるとし、進行中の貿易交渉とは切り離して考えるべきだと、スリバスタバ氏は述べた。
「インドはこの2国間貿易協定への参加を再評価し、マレーシアのように、協定から距離を置くことも検討すべきだ」
トランプ政権が新たな関税案を発表するのは、昨年導入した世界的関税措置について、米連邦最高裁判所がその大部分を無効と判断した今年2月以来。トランプ氏は昨年4月2日、この日を「解放の日」と呼び、世界各国からの製品に対する相互関税を発表した。
この「解放の日」関税を今年2月20日に最高裁が無効としたことについて、「ひどい」判断を下した、自分の通商政策を退けた判事たちは「愚か者」だと、トランプ氏は非難。
そして同日に、世界的に10%の追加関税を課す大統領令に署名したと発表した。税率を後に15%に引き上げるとも述べた。
しかし、現時点では税率は10%にとどまっている。この追加関税措置は、議会によって延長が承認されなければ、7月に期限切れとなる。
(追加取材:ソウティク・ビスワス・インド特派員)










