ウクライナがカスピ海でイラン船攻撃、二つの戦争が直接結びつく 報復の脅しは一蹴

カスピ海のイラン沿岸に2人が離れて立っている
画像説明, カスピ海はロシアとイランの間で戦略的に重要な直接補給路となっている
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ポール・アダムス外交担当編集委員(キーウ)

ウクライナは25日、カスピ海でイランの貨物船を攻撃した。イランは報復措置を取ると脅し、ウクライナはこれを一蹴している。

今回の出来事は、イランでの戦争とウクライナでの戦争を、初めて直接的に結びつけるものとなった。

ウクライナのアンドリー・シビハ外相は27日午後、「イランの脅しは不当で根拠がない」とソーシャルメディア「X」に投稿した

「テヘランの政権は、ロシアによるウクライナ侵略の直接的な共犯者だ。2022年以降、モスクワの犯罪的な戦争を、ウクライナ人を殺害してきた兵器であおっている」と書いた。2022年は、ロシアが本格侵略を開始した年だ。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日、カスピ海への長距離攻撃でウクライナ軍が「非常に良い成果」を上げたと発表した。攻撃対象には、イランと関係のある軍事貨物の運搬船も含まれているとした。

ウクライナ保安庁(SBU)は、カスピ海北部の石油施設やロシアのミサイル艇、「国際制裁の対象となっている貨物船」を、ドローンで攻撃したと発表した。

イランのカゼム・ジャラリ駐ロシア大使は、標的にされた「アンナ」号は、ヴォルガ川河口から約5キロの海上に停泊していたと、イラン国営通信に述べた。

ウクライナのイェフゲン・コルニチュク駐イスラエル大使は、攻撃対象だった船舶は民間貨物ではなく、ドローンやミサイルの部品をイランからロシアに運んでいたと、イスラエルのニュースメディアN12に話した。

同大使はまた、ウクライナとイスラエルは別々の戦線で、同じ「悪の枢軸」と相対しているのだと主張した。

BBCが作成したカスピ海地域の地図。カスピ海を囲む国々や海に接する国々を示している。カスピ海からみて、ロシアは北と北西に、カザフスタンは北東に、トルクメニスタンは南東に、イランは南に、アゼルバイジャンは西岸に位置している。ウクライナは、西側の近くの黒海の北岸に示してある。ロシアは黒海とカスピ海の両方に接しており、ウクライナとカスピ海の間に位置する。ヴォルガ川はロシアを流れ、カスピ海の北岸に注ぎ込んでいる。右上隅の地球儀の挿入図は、カスピ海がヨーロッパとアジアの間にあることを強調している

イランとロシアは、軍事面で緊密な協力関係にある。

イランは2022年、自国製ドローン「シャヘド」をロシアに供給し始めた。ロシアはそれを改良し、ウクライナの都市に対する攻撃に使っている。

ゼレンスキー氏は先週末に公開された英スカイニュースのインタビューで、ウクライナでの戦争でロシアが使う弾道ミサイルを、イランがロシアに送る計画を立てていると述べた(複数情報によると、短距離ミサイルは早くて2024年にはすでに供給されていたとされる)。

ウクライナはここ数カ月、軍事技術の専門家たちを湾岸地域の数カ国に派遣し、湾岸諸国がイランのドローン攻撃に対して自衛するのを支援している。イランは、アメリカとイスラエルによる攻撃への報復として、湾岸諸国にドローン攻撃を実施している。

カスピ海はロシアとイランの間で、戦略的に重要な補給路となっている。

ウクライナは長年、自国の民間人を何百人も殺害してきたロシアのドローン攻撃において、イランを共犯関係にあると非難してきた。ただ、ウクライナがイランの船舶を直接的に標的にしたのは、25日のカスピ海での攻撃が初めてとみられる。

黒っぽい制服を着たウクライナの当局者数人が、歩道近くの草の上に残された黒っぽいドローンの残骸を調べている

画像提供, EPA-EFE/Shutterstock

画像説明, ウクライナ北東部ハルキウでドローンの残骸を調べる当局者ら。ロシアはイランから供給されたドローン「シャヘド」を改良したものでウクライナを攻撃している(2025年6月撮影)

イランは、この攻撃で海軍兵1人が死亡、数人が負傷したとして、強い怒りを示した。同国外務省は、「ロシアとウクライナの紛争に(イランが)介入したことは一度もない」とした。

イランのアッバス・アラグチ外相は、今回の攻撃について、「イスラエルの指示によって行われた、国連憲章に対する明白な違反であり、その目的は自国の戦争にヨーロッパを引きずり込むことだ」とXに投稿

このままにしてはならない」と大文字で強調した。

一方、ウクライナのシビハ外相は27日、Xでの声明で、アラグチ氏の投稿画像を掲載。その上に「イランのうそ」という文字をかぶせた。

シビハ外相はまた、ウクライナの港から穀物を運び出す船をロシアが攻撃していることから人々の注意をそらそうと、イランが画策していると非難した。そして、そうした攻撃は世界の食料安全保障を脅かしているとした。

ウクライナは、ロシアの影の石油タンカー船団をしきりに攻撃し、同国政府の主要収入源を断とうとしている。

また、ロシアの石油貯蔵施設通販大手ワイルドベリーズの倉庫もドローンで攻撃している。さらに、ゼレンスキー氏が言う「長距離制裁キャンペーン」も、ロシア経済にいっそう深刻な影響を与えている。

こうしたなか、一部の専門家らは、イランと事を構えるというウクライナの判断について、妥当性を疑問視している。

元ウクライナ情報当局職員のイワン・ストゥパク氏は、「貿易ルートを混乱させ、できる限りの損害を与えようというのが主な狙いだ」とBBCに話した。

「しかし、ウクライナがイランとの新しい戦線を開くのは、良い考えではない。私たちにとって良いことではない」

他方、米団体「武力紛争発生地・事件データプロジェクト(ACLED)」のオルハ・ポリシュチュク氏は、今回のカスピ海での攻撃について、「イランに対して新しい前線を開くというよりも」、ロシアの戦争遂行を支援するネットワークを標的にするという、ウクライナのこれまでの戦略の延長線上にあるものだと、見ることができると話した。

「そのルートを標的にすることで、ウクライナは従来の戦場の外でも、ロシアの補給網にいっそう圧力をかけることができる」