ヨルダン川西岸で銃撃、パレスチナ人4人とイスラエル人2人が死亡

画像提供, Magen David Adom
イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区で24日、銃撃があり、少なくともパレスチナ人4人とイスラエル人2人が死亡した。同地区で起きた事件としては、ここ数カ月で最も多くの死者が出た。
北部の村タルで起きた一連の出来事をめぐっては、さまざまな主張が食い違っている。パレスチナ人住民はBBCに対し、ユダヤ人入植者が攻撃してきたので、立ち向かったのだと話した。目撃者の1人は、複数の兵士がやってきて、発砲し始めたと話した。
一方でイスラエル軍は、ハイキング中の人々が襲撃されたとの通報を受けて対応したと説明している。イスラエル軍によると、「警備員の武器を奪い」、その警備員を殺害した「複数のテロリスト」を兵士が殺害したという。死者には、同じパレスチナ人家族の3人が含まれる。
死亡したイスラエル人2人のうち、1人は兵士だった。
イスラエル国防軍(IDF)はその後、同地域で「大規模な対テロ作戦活動」を準備していると発表した。
パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスが主導した、2023年10月7日のイスラエル攻撃をきっかけにガザ戦争が始まって以降、ヨルダン川西岸では、パレスチナの人々やその財産をイスラエル人入植者が攻撃する事態が急増している。
銃撃を目撃したというアフメド・ゼイダン氏はBBCに対し、24日早朝にタルの住民たちが、パレスチナ人の複数の住宅を襲撃していた約30人の入植者に立ち向かおうとしたことが、銃撃につながったと話した。
ゼイダン氏によると、イスラエル兵がいる中で、入植者と住民がつかみ合いになったという。
パレスチナ自治政府主流派のファタハの地元幹部、エッサム・サイフィ氏はロイター通信に対し、イスラエル軍が到着する前に入植者が発砲し、その後にイスラエル軍も発砲して応じたのだと説明した。
パレスチナ当局者によると、ほかにも複数のパレスチナ人が負傷した。
イスラエルとパレスチナの主張
IDFは、パレスチナ人が先に攻撃してきたと主張している。
IDFによると、同地域でハイキングをしていたイスラエル人が襲撃されたとの通報を受け、兵士がタルに向かった。この地域の一部は、パレスチナ自治政府が完全な支配権を持つヨルダン川西岸に位置し、残りの部分はパレスチナ自治政府が行政管理するイスラエルの治安管理地域にあたる。
イスラエル軍は、このハイキングは軍と調整されたものではなかったとしている。
警備員が近くの入植者の前哨基地から現場に駆けつけたところ、パレスチナ人に銃を奪われ、その銃で複数のイスラエル人が射殺されたと、IDFは説明している。
その後、兵士たちは「テロ攻撃を実行したテロリスト1人を排除した」という。
IDF中央司令部のアヴィ・ブルース少将は、この人物について、「銃撃戦」で死亡した同じ家族の4人のうちの1人だとした。
地元メディアによって2本の動画が広く共有されているが、これが本物かどうかは独立した検証はなされていない。
1本目の動画には、銃声が響く中、パレスチナ人とイスラエル兵、私服姿の武装したイスラエル人の間で対立が起きているようにみえる様子が映っている。子どもを含むイスラエル民間人の集団がその様子を見守り、やじを飛ばしている。続いて、私服姿の武装したイスラエル人が、パレスチナ人男性2人を押しのけ、蹴り飛ばす様子が確認できる。
別の角度から撮影された2本目の動画では、男性2人が銃を奪おうとし、うち1人が成功したように見える。現場は混乱状態で、男性が発砲したと思われる音や、兵士が応戦する様子が記録されている。
IDFは、27歳の兵士が「村周辺での作戦行動中に倒れた」と発表した。死亡に至った経緯は明らかになっていない。
イスラエルの救急当局は、イスラエル人2人が負傷したと明らかにした。
パレスチナ自治政府の外務省は、タルで起きた「虐殺行為を、最も強い言葉で非難する」と表明。「入植者によるテロの激化は、イスラエル政府と占領軍による保護、政治的支援、そして完全な免責がもたらした直接的な結果だ」と指摘した。
さらに、「イスラエル当局による扇動は、これらの犯罪をあおり、助長し続けている。責任を問われることなく入植者の暴力が広がる環境を生み出している」と、同省は付け加えた。
ヨルダン川西岸ナブルス南西に位置する現場を取材するAFP通信の記者によると、道路は封鎖され、兵士がほかの容疑者を捜索しているという。
IDFはその後、ナブルスの病院を急襲し、「銃撃事件に関与したテロリスト2人を拘束した」と発表した。2人は治療を受けるため病院を訪れていたという。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「テロリストと、それを画策し支援する者たちに対し、全力で対処する」と表明した。
ネタニヤフ氏は治安当局者との緊急会議を招集し、ハヴァト・ギラド入植地に近い現場周辺には増援部隊が派遣された。
ネタニヤフ氏の事務所は、イスラエル・カッツ国防相との共同声明を発表し、タルにあるパレスチナ人銃撃犯の自宅を取り壊すとともに、無許可の入植者前哨基地の合法化と、新たな前哨基地の設置を加速させると明らかにした。
前哨基地とは非公認の入植地のことで、丘の上に複数のトレーラーハウスが設置されていることが多い。これらは、国際法およびイスラエルの法律で違法とされる。
イスラエル野党・民主党のヤイル・ゴラン党首は、ネタニヤフ首相とカッツ国防相の共同声明について、「同地域を刺激しようとする明確な意図」があると、ソーシャルメディアに投稿した。
入植者と地元住民の衝突相次ぐ
タルでの事件後、ヨルダン川西岸の北部にある近隣の複数の村でも、武装した数十人の入植者とパレスチナ人との間で暴力的な衝突が起きたとの報告が相次いでいる。地元の医療関係者によると、複数のパレスチナ人が負傷し、ファラタでは1人が頭部を撃たれた。
イスラエルの極右政治家のイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、「殺人犯たち」の村はガザと同じように扱われるべきだと述べた。
「ユダヤ人が1人殺害されるたびに、敵は土地と家を失わなければならない」とも、同氏は述べた。
イスラエル入植者との衝突で、パレスチナ人が日常的に死傷している一方、パレスチナ人によるイスラエル人殺害は、ヨルダン川西岸を危険な局面へと追い込んでいる。
国連によると、2023年10月以降、ヨルダン川西岸では1114人のパレスチナ人が殺害されており、その大半にIDFが関わっている。少なくとも35人の死亡には、入植者による攻撃が関係しているという。
ガザでの開戦以降、ヨルダン川西岸では、パレスチナ人による攻撃や、イスラエル軍の作戦で、民間人と治安要員を含むイスラエル人41人が殺害されたと、国連は報告している。
イスラエルは、1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸と東エルサレムを占領して以来、約160の入植地を建設。推計330万人のパレスチナ人が暮らすその地域で、現在計70万人のイスラエル人が入植地に住んでいる。
こうした入植地は、国際法で違法とされている。パレスチナ人は、ガザ地区とともに、入植地の土地も将来の自分たちの独立国家に含まれるとしている。















