ポーランド憲法裁に治安部隊が出動、政府と裁判所トップの対立激化

黒い金属製の柵を境に、手前に市民が、向こう側に武装した警察官らがいる
画像説明, 首都ワルシャワの憲法裁判所前では、政府の措置に抗議する人々と警官が向き合った(30日)
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アダム・イーストン記者(ワルシャワ)

ポーランドの警察は30日、憲法裁判所に治安部隊を配備した。同国では、ドナルド・トゥスク首相率いる親欧派政権と、右派「法と正義」(PiS)の前政権が任命した憲法裁トップの対立が激化している。

トゥスク政権はこの日、憲法裁のボグダン・シフィエンチコフスキ長官の職務停止を発表した。さらにワルデマル・ジュレク法相は、シフィエンチコフスキ長官とバルトウォミェイ・ソハンスキ副長官に対する刑事訴追を行うため、2人の訴追免除特権を剥奪(はくだつ)するよう要請した。

トゥスク首相は司法の非政治化を誓っている。30日には、首都ワルシャワの憲法裁前に抗議のために集まったPiSの支持者たちに対し、この措置を擁護した。

白いワシのシンボルが付いた黒い野球帽をかぶった男性が、夜間の路上で自分の身分証明書をカメラに見せている
画像説明, ポーランド憲法裁のシフィエンチコフスキ長官は、裁判所建物の近くで記者たちの前に姿を現した。(30日、ワルシャワ)

PiSの支持を受けているカロル・ナヴロツキ大統領の首席補佐官は、大統領が憲法裁に到着したと明らかにした。

ナヴロツキ氏は、ワルシャワでの衝突に対応するため、セネガル訪問をキャンセルした。同氏は、ダカールで開催される夏季ユースオリンピックに向かう途中だった。

ワルシャワでは、裁判所庁舎に抗議者らが侵入するのを阻止するため、治安部隊が配備された。

憲法裁判所はソーシャルメディアへの投稿で、政府が訴追しようとしている2人の判事は、依然として同裁判所の合法的に任命された上級判事だと強調。「これらの行動に参加した全ての者は、クーデターという犯罪を犯している」と述べた。

一方、トゥスク首相はソーシャルメディアへの投稿で、「法の支配を回復することは我々の義務だ。長年にわたる『法と正義(PiS)』党による無法状態を経て、これは難しく、時には苦痛を伴うプロセスで、断固たる行動を必要とする。ほかに道はない」と述べた。

ポーランドの憲法裁は、法律の合法性を判断する権限を持つ。2015年に発足したPiS主導の政権は、憲法裁で多数派を確保するため、迅速に判事を任命した。

その後、欧州人権裁判所(ECHR)と欧州司法裁判所(ECJ)は、PiSが多数派を占める議会が任命した判事3人は、前の議会が既に正当に任命した役職と重複しているため、選出は不適切だと判決を下した。

欧州の裁判所はさらに、ポーランド憲法裁はもはや「独立した公平な裁判所」ではないとの判決を下した。2024年に成立したトゥスク政権は、この判決を根拠に、同裁の判決の公表を停止した。

しかし、トゥスク氏はPiS政権時代の司法改革を覆すことに失敗した。ナヴロツキ氏と、やはりPiSが支援していた前任のアンジェイ・ドゥダ氏が、大統領として拒否権を行使し、一連の法改正を阻止したことが理由の一つだ。

ナヴロツキ大統領はまた、選考手続きに欠陥があったとして、今年3月以降に議会が選んだ憲法裁判事5人の就任宣誓を拒否している。

そのうちの一人、アンナ・コルウィン=ピオトロフスカ氏が、現在、憲法裁の暫定責任者に任命されている。

屋外で行われている式典に出席し、並んでいるトゥスク氏をはじめとする閣僚たちの前を、ナヴロツキ大統領が通り過ぎている
画像説明, ナヴロツキ大統領(左)とトゥスク首相は、憲法裁判所をめぐり政治的な綱引きを繰り広げてきた(2025年8月撮影)

欧州評議会の憲法問題に関する諮問機関「ヴェニス委員会(法による民主主義のための欧州委員会)」は今月初め、ナヴロツキ大統領は判事たちの宣誓就任を認め、裁判官としての職務を可能にするべきだと見解を示した。

ポーランドのジュレク法相は、憲法裁のシフィエンチコフスキ長官とソハンスキ副長官について、判事たちに裁判を行わせなかったとして刑事訴追されるべきだと述べた。

トゥスク氏の支持者の間は、首相がPiS政権時代の司法改革を覆すために断固とした行動をとらなかったと非難する者もいる。

ポーランドでは来年に議会選挙が予定されている。今回のトゥスク政権の行動は、有権者の間で首相の人気を高めるための動きだという見方もある。

一方、トゥスク首相は9月、自分の内閣での閣僚経験を持つ、政治家で弁護士のマチェイ・ベレク氏を憲法裁判事に推薦したことを批判されている。

今回のシフィエンチコフスキ氏の停職処分についても、弁護士のマルツィン・マチャク氏は、「数え切れないほどの理由から」法的根拠がないと指摘。「憲法裁判所における今日の措置は、私の意見では、この機関と法の支配の問題を20年間葬り去るものだ」と批判した。

マチャク弁護士はPiS政権時代の司法改革を批判し、シフィエンチコフスキ氏を同裁史上最悪の長官だと考えていると公言している。それでも、「武装警察の映像や、司法相が政令によって憲法裁長官を解任できるとする法的解釈は、今後何年間も、法治主義への強い反発を引き起こすだろう」と付け加えた。