ノーベル平和賞はピレイ元ICC判事に 平和と国際法に貢献

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ノルウェーのノーベル委員会は9日、2026年のノーベル平和賞をナヴァネセム・ピレイ国際刑事裁判所(ICC)元判事(85)に授与すると発表した。ヨルゲン・バトネ・フリードネス委員長は、「平和と国際法の促進」への貢献を授賞理由として挙げた。「ナヴィ」の愛称で知られるピレイ氏は、受賞を知らされた当初は「絶対に冗談」だと思ったと笑っていたが、本当だと分かると「国際犯罪の全ての生存者」に自分の受賞を捧げると話した。
ノーベル委員会は、ピレイ氏による「平和と国際法の促進に向けた取り組み」が、「より包括的な世界の法秩序」への道を切り開いたことを評価したと述べた。
ピレイ氏は、数十年にわたるキャリアの中で、ルワンダ、ミャンマー、ガザなど各地での人権侵害の申し立てを検証する活動に携わってきた。アパルトヘイト(人種隔離政策)下の南アフリカで生まれ育ち、弁護士として、反アパルトヘイト活動家たちの弁護を務めた。そして今回、ネルソン・マンデラ氏やデズモンド・ツツ大主教に続き、南アフリカ出身で5人目のノーベル平和賞受賞者となった。
ノーベル委員会のフリードネス委員長は、ピレイ氏の活動は、「戦争犯罪、人道に対する罪、そしてジェノサイド(集団殺害)が、確実に訴追されるようにするために、不可欠なものだった」と授賞発表にあたって述べた。
委員長は、「ナヴィ・ピレイ氏の長いキャリアを通じて、普遍的な法の原則への献身と、揺るぎない道徳的指針は、終始一貫している」ともたたえた。
さらに、「世界がここしばらく見なかったほど多くの戦争や紛争が起き、人類の存亡にかかわる課題が山積する今の時代、国際法はもはや平和と安全保障を補完するものではない。それは絶対的に必要なものだ」と委員長は強調した。
その上で委員長は、まだピレイ氏と連絡が取れていないのだと言い、「ノルウェーの電話番号で電話がかかってきたら、お願いですからとってください」、「なるべくすぐに、ぜひともお話したいです」と笑いながらピレイ氏に呼びかけた。

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委員長はさらに、個人と国家が法の支配を順守することの責任をピレイ判事が強調し、国家や指導者の責任を問うことで被害者に希望をもたらしてきたと述べた。
委員長は、国際法の制度が現在、深刻な圧力にさらされていることにも言及し、いわゆる「力の政治」への移行が見られると指摘。「力が正義に優先すると、安定を損なってしまう」と述べた。
そして、正義と人間の尊厳に対するピレイ氏の献身は、より平和な世界の実現を目指す全員にとって希望とインスピレーションの源となっていると強調した。

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発表から間もなく、ピレイ氏は滞在先のドイツ・ニュルンベルクで集まった人たちを前に、「絶対に冗談でしょう」と笑い、自分への拍手に感謝した。
「皆さんの拍手が何より大事です。でも私は弁護士で裁判官なので、これが本当なのか検証しておきたいんです」とも言い、続けて冗談まじりに、「皆さんがあともう少し拍手してくれれば、この賞をトランプ大統領と分け合うかもしれない」と述べた。昨年の平和賞を受賞した南米ヴェネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏は今年1月、「私たちの自由に対する彼の比類ない献身をたたえて」として、自分の平和賞メダルをトランプ氏に贈呈している。
ピレイ氏は、平和賞を「国際犯罪のすべての生存者」に捧げるとともに、「罪が罰せられないまま横行するなど許されないよう、思いやりと勇気を持って活動を続けている」国際司法の実務家たちにも捧げた。

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インド系のピレイ氏は1941年、アパルトヘイト時代の南アフリカで生まれた。バス運転手の父親のもと、ナタール州ダーバン市内の貧しい地区で育った。1967年に女性として初めて同州で法律事務所を開設し、アパルトヘイトによる権利侵害と闘った。米ハーヴァード大学ロースクールで博士号を得た後、1995年に非白人女性として初めて南アフリカの高等裁判所判事となった。
ルワンダ国際刑事法廷、ICC判事、国連人権高等弁務官などを歴任し、2021年から2025年にかけては、国連人権理事会が設置した「東エルサレムを含むパレスチナ被占領地及びイスラエルに関する独立調査委員会」の委員長を務めた。
現在は国際司法裁判所(ICJ)の特任裁判官として、ミャンマーによる少数派イスラム教徒ロヒンギャに対する行動がジェノサイド条約違反にあたるかをめぐる訴訟を担当している。
ガンビアが提起したこの訴訟でミャンマーは、少数派イスラム教徒の集団を意図して破壊しようとしたことはないと反論。政府代表は今年1月に法廷で、ジェノサイドを行ったという主張は「立証されていない」と述べた。
イスラエルとアメリカが反発
パレスチナとイスラエルに関する独立委員会は昨年9月、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区のパレスチナ人に対してジェノサイドを行っていると認定した。さらに、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領、ベンヤミン・ネタニヤフ首相、そしてヨアヴ・ガラント元国防相が演説や声明を通じて、「ジェノサイドの実行を扇動した」と結論した。
専門家3人からなる同委員会は国連を公式に代表するものではなく、法的権限もなかった。
イスラエルはその調査結果を退けるとともに、3人の委員について「ハマスの代理人」として行動していると非難した。
同委員会は2024年6月の報告書では、2023年10月7日に約1200人が殺害され、さらに251人が人質に取られた攻撃について、武装組織ハマスおよびその他のパレスチナ武装組織が戦争犯罪やその他の重大な国際法違反を犯したと結論付けていた。同じ報告書は、イスラエルについても戦争犯罪を犯したと非難していた。
イスラエル外務省は9日、ピレイ判事の平和賞受賞について「反イスラエル的な憎悪と偏見を正当化するために賞をグロテスクに政治利用したものだ」と批判。「イスラエルを執拗(しつよう)に、かつ政治的動機に基づいて悪魔化し、『genoLIE(ジェノライ、ジェノサイドといううそ)』を広めるうえで、彼女が果たしてきた役割は実に雄弁だ」と述べた。
ノーベル平和賞を受賞したい意向を以前から示していたトランプ大統領は、ノーベル委員会が「アメリカとイスラエルを露骨に憎む人物」と評した人物に賞を授与することで、この賞を「おとしめた」とする主張を、自分のソーシャルメディアで再投稿した。
この後、トランプ政権はICCに対する多岐にわたる制裁を発表した。政権は、同裁判所の資源と活動能力を制限することがねらいだと説明している。
これに対してICCは、トランプ政権の行動は法の支配に対する攻撃だと批判した。
ノーベル委員会のフリードネス委員長は、ピレイ氏に平和賞を授与したからといって、ガザにおけるイスラエルの軍事作戦がジェノサイドに当たるかどうかについて委員会が立場を示したわけではないと述べた。この問題に関するピレイ氏の国連委員会での活動について問われると、同氏の受賞は「彼女のこれまでの仕事全体」に対して授与されたものだと答えた。
ICCの赤根智子所長は、「国際法秩序と法の支配が深刻な試練にさらされている今、この評価は格別の意義を持つ」と、ピレイ氏の受賞を評価。「国際司法が恒久的な平和の礎として果たす極めて重要な役割が認められたことを意味する」と述べた。
フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は、ピレイ判事の受賞は人権、法の支配と正義、そして説明責任が、平和や安全保障、繁栄を含むあらゆるものの基盤なのだと、改めて確認する」ことだと評価した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ピレイ氏が一貫して、「現代で歴史的な国際法訴訟のいくつかにおいて、揺ぎなく正義を訴え続ける独立した声」だったとたたえた。
南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、ピレイ氏が「反アパルトヘイト活動家たちを弁護した先駆者」で、「南アフリカおよび世界の人々の人間の尊厳を守り、希望をもたらすために尽力してきた」と称賛した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務総長は、ピレイ氏が受賞を知った際に同席していたのだと明らかにし、今回の受賞者の選択は「慧眼(けいがん)」だと評価した。
カラマール氏は、「国際法と正義の両方が攻撃され、あまりに多くの国がこの二つを空洞にしようとしている現在、彼女がノーベル平和賞を受賞するのは、タイミングとして最高だ」と述べた。












